無料エステの罠…

「へぇ…無料…」

いつもの通い慣れた道に新しく出来たエステの前の看板をなんとは無しに眺めながら優子はそこに大きく書かれた無料の文字に足を止めた。

そう言えばエステなんて一度も行ったことがない。

たまには自分にご褒美を、と思う事もあったが毎月の生活で正直いっぱいいっぱい、美容室にだって毎月行くのは少しきついかな、という懐事情。

悲しいかな、都会の片隅で必死に働く派遣OLにはエステなんて気軽に行ける場所ではないのだ。

最近伸ばしっぱなしの黒髪はきちんと纏めたつもりでも仕事終わりの今では少々ほつれ気味、化粧品もブランドや成分より価格で選んでいるくらい。

そんな彼女の目の前で『通常4000円極上50分全身コース今ならオープン記念完全無料!』そう書かれた看板が輝く。

無料だもの、多少手を抜かれたって構わないし、後で美容用品なんかの購入を勧められてもどうせ手持ちもカードもないから断れる…そこまで考えて優子はその店の小さな入口に足を進めた。

タダより怖いものはないとはよく言ったもので無料なら無料なりの理由が必ずあるのだがそれを覚悟した上でサービスを受けるのであればなんら怖いことはない…少なくとも彼女はそう考えていた。

この時までは。

受付で優子を迎えたのは一人の若い女性。

さすがエステサロンの窓口なだけあってはっと目を引く端正な顔立ちにきれいな肌をしているその女性は笑顔でプラン内容を説明すると彼女を更衣室に案内した。

「ちょうど空いている時間帯ですからすぐ受けられますよ。

まずは今着ているものを全て脱いで頂いて、こちらの紙パンツとガウンを着用して待っていてください。」

「は、はい」

紙パンツ?聞いたことはあるけど本物を手にするのは初めてだな、と妙に感動しながらさきほど女性に渡された小さな袋に目をやると透明な袋の中に薄い紙でできたくしゃくしゃしたなにか、おそらく広げたらパンツの形になるであろうモノが詰め込まれている。

「脱いだ衣類とお荷物はこちらのロッカーに入れて、鍵はお客様のほうで持っていてください」

案内の女性が退室した後、優子は改めて手元の紙パンツに目を落とす。

思っていたより薄い生地にこれは色々透けてしまうのではないか、もしかしたら途中で破れてしまうかもと心細くなる。

服を脱ぎ、恐る恐るそれを履いてみるとやはり黒々とした陰毛が、うっすらとではあるが透けてしまっていた。

ふと顔をあげると壁一面に設置された大きな鏡にトップレスで透けた紙パンツを履いた自分が間抜けに突っ立っていて、もし何も知らない人が見てしまったらこれはさぞかし滑稽な姿だろうと少し切なくなりながら薄いガウンをのそのそと羽織った。

そんな少々シュールな姿を別室からモニタ越しに見つめている人物が居た。

タバコを咥えた無精髭のその男はにやりと笑うと少し離れたところに居る制服を着た若いエステティシャンの男を手招きした。

「いい子が来たよ。この子、気合いれて施術してあげて」

「はい、わかりました」

「失礼いたします」

突然鳴らされたノックの音に、手持ち無沙汰に施術ベッドに腰掛けていた優子は少し狼狽うろたえながら背筋を伸ばす。

「あ、はい。どうぞ」

制服を着た男性がうやうやしく挨拶をし、こんなオイルを使ってこんな施術を、ともっともらしい説明を始めるが優子の耳には届いていなかった。

てっきり女性のエステティシャンが来るものとばかり思い込んでいた彼女の目の前には俳優も顔負けに整った顔立ちの男がいるのだから平常心でいられるわけもない。

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