―それは、お互いが大好きな双子のわたしたちの話だ。
「あー!待って待って!!」
あたしはその声に驚いて、伏せていた自分の体を起こしてみた。
目の前には双子の弟のタケルがいた。
「あ、起こしちゃった?」
「誰でも起きるわ。そのボリュームは」
「声のボリュームについては僕の数倍ひどいよ
つい笑ってしまったあたし。
「うそ!」
「寝言もでかい声だしねー」
「タケルは本当に失礼だよね。あたし一応女子だよ」
「あれ、そうだっけ?」
そうやっていつも『女子扱い』をしないタケル。
あたしはそんなタケルに、抱いてはいけない感情を抱いている。
これは絶対にバレてはならない。
今までの関係性が壊れるからだ。
大好きなタケル。
あたしの兄でうれしいけど、なんで双子だったんだろう。
違ってたらあたしはタケルを離したりしない。
「あ、そうだ。何を待って待ってしてたの?それで起きたんだけど」
「ケンタが僕の持ってた手帳をくわえて走って・・・・あ!!そうだ!!おいケンタぁーー!!!」
「・・・・あはは」
ケンタというのはうちで飼っている柴犬。
ケンタッキー・フライド・チキン店の前で、捨てられていたところを拾った。
もちろん、あたしとタケルで育てるっていう条件で。
「まぁた探しっこしてるの?飽きないねー」
母親の佐枝子。
この人は二人きりでいるといつも邪魔をしてくる。
なんか察知してるんかな・・・
「かわいいねータケルくん。よかったね香澄ちゃんのお兄ちゃんで」
なるほどね。
「そうだね。でもあたしは―・・・」
「でも、とかはやめて!聞きたくない!!」
ほらね。
あたしがタケルが異性として見てること気づいてるんだ。
それを正そうとわざと繰り返すんだ。
けどね、あたしだって混乱してるんだ。
将来あたしはタケル以外の人と結婚するんだって決めてるから。
そう、あたしはね、
タケルと一緒の高校を卒業したら、家族から離れると。
これはお父さんにしか言っていない。
ばれて喜ばれていたらショックで立ち直れないからさ。
けど、お父さんはわかってくれた。
きっとお母さんと同じで察していて、それが一番いいと思ったから。
翌日から、高校卒業式の練習が始まった。