あたしは今、ものすごい動揺している。
だって…今日から英語の特別講師に来た人が、まさかの彼氏だったから。
なんで……なんで……
あたしに内緒にしてたんだぁぁあああ!!!!???
「井口せーんせっ」
キラキラと輝く笑顔で彼氏こと、井口倫明(いぐちともあき)に近寄るあたし。
周囲にはかわいらしい女子がわらわらといたが、
黒いオーラをまとったあたしが近寄れば、一瞬身を引く女子がいる。
………
………
「なにかな?」
「ちょーっとこっちに来てもらえます?」
親指を立てて廊下を示した。
あたしはご立腹ですよ。
だって、黙ってるなんて…
「で?あたしがなんで笑顔かわかるよね?」
「……☆(笑顔)」
「かっこ笑顔☆じゃねーわ!なんで今まで黙ってたのぉ!!??」
声を張ると周囲から注目を浴びる。
周りが見えていないあたしを、倫明は首をつかんで人気の少ない階段下に連れていく。
………
………
もともとOBだということは知っていた。
けどなんで今…
あたしがなぜこんなに動揺しているかというと、実は倫明に内緒でバイトをしていたから。
バレたくないのにーーーー……っ!!!
「なんでそんなに動揺してんの?」
「へ??」
「さては隠し事かな?」
「いや、」
「恋人の俺にも言えないような話を、学校ではしているのかな?」
「待って…」
「さて、どっちかな?」
「いや何もないけど、いきなりじゃびっくりすんじゃん!!まぁいいや、じゃ、LINEするねーー!!」
あたしはこのままではまずいと思い、離れることにした。
しかしあたしの左腕は彼にがっしりとつかまれていた。