「どういうことですか?」
「頭の足りない女性は俺の顔に負けるんです。
でも賢い女性は最初は俺に惹かれてくれても、俺に違和感を覚えて離れるんですよ。
おかげで俺は、今日まで賢い女性からまともに相手にされたことがありません」
向井さんは笑っていた。
向井さんの笑い声を聞きながら、私はやっぱり彼はリスクが高い人だと思った。
「それから、近いうちに恵美さんの元彼氏さんから復縁のお願い連絡があるかもしれません」
「どうしてですか?」
「あっちはあっちで、まあいろいろあるようですよ」
私はそれ以上の詳しい話を聞く気にはなれなかった。
「幸人から連絡あるとしても、復縁のお願いなんてあの人がするでしょうか?」
「俺は元彼氏さんの性格は知りませんが、元彼氏さんと浮気相手さんはうまくいってないようですよ。
そうなると男は他の女に逃げる。
手っ取り早いのが昔の女ですよね。
男は恋仲になった女の気持ちが完全に冷めるとは信じられない、とシャーロック・ホームズ先生もおっしゃってますしね」
「お願いなんてされても、私はやり直すつもりなんてないです」
「まあ、そうでしょうね。俺は恵美さんを支持しますよ」
幸人はもてるしプライドも高いので、元彼女に復縁要請をするなんて信じられなかった。
でもそんな私の考えは外れて、向井さんの言うとおり幸人は私にLINEで復縁要請をしてきた。
何度断っても、幸人はしつこかった。
メッセージを何通も送ってきては「愛してる」だの「真実の想い人は君だけ」だの、気持ちの悪い復縁要請をしてきた。
そのうち、私のマンションにまで押しかけかねない勢いになった。
さすがに神経が図太い私も怖くなり、向井さんに相談した。
向井さんは「そうですね…」と言って、にやっと笑った。
いつもの好青年とは違う顔。
これが彼の素顔と思うと、私の向井さんに対する違和感が消えた。
………
………
………
向井さんに相談した数日後の夜中、いきなり幸人が押しかけてきた。
うっかりしていて、幸人から合鍵を返してもらうことを忘れていた。
幸人はべろべろに酔っていて、玄関に出てきた私をいきなり押し倒した。
「ちょっと!何すんのよ!やめてよ!」
私は幸人を押しのけようとしたけど、男に女の力でかなうはずがない。
しかも幸人は酔ってるから、理性も何もかもぶっ飛んでる。
「離してよ!警察呼ぶよ!」
そんな私の口を幸人は手で押さえて、私の首筋に舌を這わせてきた。
「ん…っ!」
抵抗したくても、力では幸人に押し負けてる。