「何を考えてるの?」
行為の最中にぽかんとしたあたしを不思議そうに安藤さんは見ていた。
「いえ、ただ…奥さんに申し訳がなく感じます」
「そんなに余裕あるんだね!じゃぁ…」
安藤さんはあたしの膣内に指を三本も入れてくる。
「んぁあ!!」
「うわーぬるぬる」
「は、ぁ」
「さて、こうしちゃおっかな」
挿入された指は、膣内でバラバラとかき乱してくる。
感じすぎであたしは安藤さんの奥さんのことなんか考える暇、隙を与えない。
こんなにも感じるのは、安藤さんだから。
一目ぼれした安藤さんだからなの。
安藤さんと結婚できた奥さんがうらやましい。
もっと早く安藤さんとあたしが出逢いたかった。
悔しい―…
………
………
………
「葉月?」
「え?」
「痛いか?」
「いえ…」
「じゃぁなんで泣いてる?気持ちよいからというわけではなさそうだな」
そうして安藤さんは空いていた手で、涙を拭いてくれた。
優しい安藤さん。
「なんであたしをこんな風にするんですか?」
「いやか?」
「心はないくせに。あたしは…こういうことをしないでも、少しでも一緒の時間が欲しいだけだし、それがこういう行為だとしても、安藤さんといれれるなら何でもよかった」
「良かったって過去形なの?」
「だって…」
「俺を嫌になった?」
「いいえ!安藤さんは素敵な人です!けれどもやっぱり奥さんの立場を考えると…」
せっかく涙をぬぐってくれたのに、あたしはまた涙を流した。
「…」
安藤さんは膣内の指を抜いて、ひょいっとあたしを抱えた。
「もう少し待ってて」
「え?」
「ちゃんと話すから。だから、今は待ってて」
「何を?」
「いいから。さて、そろそろ戻ろうか」
何が何でも言わないつもりみたいだ。
こんなんじゃ…あたし安藤さんが忘れられなくて死んでしまう。
あれ?
あたしいつの間にこんなに好きになっていたんだろう。
安藤さんの髪も、広い背中も、がっしりとした腕、すらっと伸びる両腕。
触れられるようになったら独占欲が湧き出てたまらない。
「今日は…体調が悪いので早退します」
「葉月?」
「名前で呼ばないで!」
あたしは耐え切れなくなってそのまま部屋を出て、走った。
追いかけてきてくれないこともわかってるけど、これ以上安藤さんを好きになりたくないから。
忘れたい。
お願いです。
忘れさせて!