今の時代、親が決めた見知らぬ男性と、家同士のために結婚するなんて信じられない…。
しかも簡単に離婚すら出来ないなんて、信じられない。
見たことのない人といきなり顔合わせして、そのまま結婚して、初夜を迎えるなんて、考えただけでもゾッとする。
まぁでも、結婚は別として、『エッチ』という括りでいうと、今もそんない変わらないのかな??
このネット社会では、簡単に男性とやり取りして、2人が同意すれば会うことができる。
私も最近、マッチングサイトで知り合った1人の男性とやり取りしている。
まだ一週間もたってないけど。
つい先日、「逢いたい…」こんなメッセージがきた。
そう言われた瞬間、何を考えるでもなく「会おう」と言ったのは他でもない私自身で、
半ば勢いだけで話は進みトントン拍子で約束を結んだ。
服装とだいたいの特徴をを伝えて、約束の駅で待つ。
ちゃんと来るよね?気づいてもらえるかな?ガッカリされないかな…?いざその時間になると、
何故か今更になって不安が湧き上がる。
もちろん不安の中にも、ワクワク感は混ざっている。
心配になって着信がないか携帯を何度も確認したり、無駄に辺りを見渡したり…。
週末の夕方は、綺麗に着飾った女性が多い気がする。
私も、もっとおしゃれしてくればよかったかなぁ、そう思うと少し肩身が狭い。
そんなことをぼんやり考えはじめた時、
「ミキちゃん?」
背後からいきなり、知らない声で自分の名前を呼ばれたことに驚きすぐに振り向く。
背の高い男性が人懐っこい笑顔で立っていた。
「…ミキちゃん、だよね?」
「あ、はい。そうです…ヨウイチさん、ですか?」
「そうだよ!」
初めて会ったヨウイチさんは思ってたよりかっこいいし、優しそうな人だった。
私は昔から人付き合いが苦手で、よくよく考えると、ネット以外のリアルな空間で人と接するのは久々だった。
我ながら、よく勢いで会う約束までしたよな…と感心してしまった。
「とりあえず、何か食べよっか?ミキちゃんは何が好き?」
爽やかな笑顔で聞かれても、久しぶりのリアルな男性との会話に固まった笑顔で
「好き嫌いは特にありません」と、
ぶっきら棒に答えるのが精一杯だった。
「じゃ、イタリアンどう?」と聞かれても、ただただコクリと
人付き合いは苦手だった、本当に。だから、このままきっと、5.5帖の狭い部屋で、
パソコンに向かい、一人ぼっちで生きていく、そして孤独に死んでいく…。
自分の人生なんてそんなもの。
そう思って何年も卑屈に生きてきた。
だけどヨウイチさんと知り合い、チャットで、通話で、頻繁に話すようになってから毎日が確実に変わっていった。
恥ずかしいけどデートする妄想をしたりもして、今考えると相当浮足立ってたと思う。
1週間程度のかなり短い期間だけど、私の中のヨウイチさんの存在は、
今やとてつもないパーセンテージを占めている。
生きがい、と言っても過言ではないかもしれない。
久々の外食は、素敵な雰囲気で美味しい料理、目の前にはヨウイチさん。
これまでに経験したことがないほどキラキラした夢のような楽しいものだった。
ヨウイチさんはお酒の知識も豊富で、いかにも素敵な年上の男性、といったスマートさがあった。