「ひゃははは、たのしいー!ふひひ」
「うん、楽しいね、はは…」
僕に生まれて初めて出来た恋人は、今どきの子にしては珍しく二十歳になるまで…つまりついさっきまでアルコールの類を飲んだことがなかったらしい。
若者ってのはヤンチャする生き物だと思ってた俺には嬉しい誤算でもあり好奇心が刺激される興味深いことでもあった。
「
可愛い恋人の二十歳の誕生日、まずはお酒っぽくなく飲みやすいものから、と考えに考えた末、飲みやすくて酔いやすいレディ・キラーとしては王道の酒…オレンジジュースの様に飲めちゃうスクリュードライバー、それに35度のリキュールをプラスしたハーベイ・ウォールバンガー、甘いチョコレートの香りながらウォトカとジンが効いてるルシアンあたりを揃え、更にはカルーアミルクやさほど高くないスパークリングワイン、友だちにもらった果実酒にと色々用意しておいたのだ。
我ながら頑張ったと思う(お財布的に)
バーテンの友人に頼んでカクテルの特訓をしてもらったのは勿論のこと、オツマミだって女性受けするお洒落な物を数少ない女友達数人からリサーチしたのだからこの努力は認めて欲しい。
普段はクールで落ち着いている優花の酔った姿が見てみたい、という純粋な好奇心に突き動かされてガラにもなく奮闘した結果は思いの外愉快な状況になりました。
彼女は酔うと笑い上戸になるらしい。
箸が転げても笑う、なんて慣用句があるがまさにその通りで目に映る全てのものがおもしろおかしく見えるらしい。
“ねぇ、あたし少し酔っちゃったみたい…”
ともたれかかられて頬を赤く染める恋人にキスしながらかっこよく
“じゃあ少し休もう、ベッドへいこうか”
なんて展開は所詮妄想でしかなかったのだ。
そして俺は今現実にいる。
「あははは、あは、
「おー、楽しいな」
「うひひ、うん!」
楽しいか楽しくないかと聞かれれば勿論楽しい。
「うふふ、あつい、ねぇ、あついよ」
「あつい?エアコン切るか?」
朝晩は冷える10月だが初めてのアルコールに体がほてったらしい、彼女は俺の言葉を聞いているのか聞いていないのかカーディガンを脱ぎ捨ててしまった。
「…あつい」
「ちょっ!」