冬のある晴れた日の午前。
ミサキとリョウタは二人っきりである温泉宿へ来た。
着くと、早速昼食を食い、それから二人は部屋の外にある小さな混浴露天風呂へ入ることにした。
二人は裸になると風呂の傍らのシャワーのある部屋で楽しそうに洗いっこしてから、ようようにお湯につかった。
そこから眺められる景色はすばらしかった。
雪に覆われて白い林の向こうには、裾の広い山々の
冬の冴え冴えとした空気がお湯に温められた体に心地よく触れて何とも言えない。
そのなかにミサキとリョウタは肩と肩をくっつけて幸せそうに微笑んでいた。
しかし実際のところ、二人の関係は必ずしも健全で羨ましいものではなかった。
と云うのも、ミサキは独身だったが、リョウタにはすでに妻子がいたのだ。
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二人は高校時代に知り合い、そのあいだ実際に関係したこともあったが、大学へ行ってからはまったく会わなくなった。
しかしそれから約十年が経ったある日、仕事の関係で二人は再会を果たした。
二人とも垢が抜けていて、大人らしく立派になっていた。
ミサキは薄化粧であったが、むしろそのほうがかえって美しいくらいで、化粧に長い時間をかける妻ばかり見ていたリョウタにはそれがいかにも新鮮だった。
またミサキも、社会人になってからより引き締まった彼の肉体がスーツの下に感じられて、さらに一層爽やかになっていたのにはとても驚いた。
ミサキは二ヶ月前に彼氏と別れたばかりで、すぐにリョウタのことを狙ったが、しかしだんだんと彼が妻子持ちであることを知るや「そりゃあ、そうか」と思わず大きなため息をした。
が、反対にリョウタのほうはミサキに積極的で、とうとう二人はその晩、駅前のホテルにて久しぶりに愛し合った……。
それから二人は何度も都合を合わせてはホテルやミサキの家で泊まっていたが、しかし何だか窮屈なので、いつか、二人でどこか遠くへ旅行しようということになった。
それは二人の再会からおよそ半年後のことだった。
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………
「すごい気持ちいいね!」
「うん、景色もいいし、高かったけど、来てよかったな」
リョウタは少し冗談っぽく言ってミサキの腕を軽く小突いた。
「もぉー」とミサキは水をバシャバシャさせながらリョウタの筋肉質な腕に掴みかかり、そして二人はキスをした。