「随分変わったね、最初誰だかわからなかったよ」
一次会が終わった遥香は佳奈子の案内で静かなバーに入る。
飴色に輝く重厚な木の扉は見るからに敷居が高そうで、自分1人なら入れないようなバーへ堂々と足を勧める彼女は同じ年とは思えないほど大人びて見えた。
「ね…ここ、高そうじゃない?私あんまり余裕ないよ」
「大丈夫、内装の割にリーズナブルだから」
「ホント?…それにしても、よくこんな凄いお店知ってるね。なんか大人っぽい」
「お客さんが教えてくれてね、それより何飲む?」
お客さん、という言葉に首を傾げかけたが、なにかバイトでもしてるんだろうと特に質問する事はしなかった。
メニューのないバーに来るのは初めてで戸惑う遥香に彼女は
“味や好みを伝えればそのとおりに作ってもらえるんだよ”
と教えてくれた。
“爽やかでオレンジかレモン系のお酒、炭酸は使わずに、アルコールは少し弱めの物を…”
そんな曖昧なリクエストからとても美味しいカクテルを出してもらえたことに感激しながら遥香は本題を切り出す。
「あの、さ…卒業してから…何かあった?随分変わったから、なんか、気になって」
彼女は少しきょとんとして、それから少し言いにくそうに口を開いた。
「あー…遥香にだけ言うけど、私、夜のバイトしてるから、その影響かも」
「…夜のバイト?」
「うん、なんだかんだでかなり稼げるよ。…興味ある?」
「まぁ、うん。私いつでも金欠だし…だけど…」