「はい、綾部です」
「あら可愛いわね!専務から伝言よ」
「‥‥‥はい」
「あと30分で仕事が終わるから、待っててほしい。とのことです!」
「仕事‥‥‥してるんですね」
「まぁね!」
「わかりました」
それから少し、待とうと決めてあたしは明日の仕事に少しだけ手をかけた。
「‥‥遅くない?」
他の同僚はすでに帰宅している。
あたしは‥‥なんでまだ待っているんだろうか。
「帰ろうかなー」
「それ待った」
「え?」
そこには汗をかいてぜぇぜぇと洗い呼吸をしている専務の姿があった。
「専務‥大丈夫ですか?」
「なんとなく君が帰ってしまいそうで走ってきた。あーのど乾いた」
そんな専務はスーツの袖でひたいの汗を拭く。
なんだか可愛い子どもみたいだ。
「ふふっ。専務の読みは正解ですね」
あたしはここで初めて専務の前で笑ってしまった。
そのあとはただただ黙ってあたしを見つめる。
何となく、恥ずかしい。
何か言いたいことがあるならハッキリ言ってほしい。
見すぎなんですが!!!
「せ、専務?何かあたしの顔についていますか?」
「あぁ、可愛いなと」
「!?」
「これは社内の男性陣が騒ぐことだね」
「なんですか?」
少しだけむすったとした表情をしてしまう。
「怒った?」
「いいえ、別に」
「それもまた、可愛いね」
あたしはそれを全否定したいので、専務が立っている場所に身体を向けて口を開いた。
その瞬間に専務はあたしの後頭部をつかんで自分に引き寄せ、
そのままキスをされた。
「んっ、」