―おはよう!今日4人で映画見に行かない?
美香は戸惑うことなくOKの返事をした。
彼女は映画が好きであった。しかしそれよりも今日の退屈な1日に遊びの予定が出来た事が嬉しかった。
また、みのりから時間と待ち合わせ場所について返信が来た。
14時に常盤公園の千鳥ヶ池に集合、映画のはじまる時間が14時40分であった。
美香は早速映画に行く事を佳代子に伝えた。
「昼ご飯はどこかでみんなで食べるの?」
「いや、ご飯は家で食べてから行く」
「帰ってくるのは何時位になる?夜ご飯は?」
「映画見るだけだから18時位には帰ってこれると思うから夜ご飯も家で食べる」
美香は部屋に戻ると今日着ていく服を選んで用意した。
そしてまた腹這いになって本を読み始めた。
10時過ぎて涼太の部屋から何か物音がした。
そしてそれに連鎖して聡太の部屋からもカーテンの開く音が聞こえてきた。
2人はほぼ同時にドアを開けて下に降りて行った。
美香は昼ご飯を食べてから約束の時間の30分前に家を出た。
自転車で常盤公園へ向かった。
美香は堤防の下を流れる牛朱別川に沿った道を風に吹かれながら通った。
欄干に鴉が止まっていて挙動不審に辺りをキョロキョロしていた。
雀が自転車の前を素早く横切って、向う岸まで飛んで行った。
間もなく常盤公園について、噴水のある千鳥ヶ池まで行った。
見渡す限りまだ誰もいなかった。
池の上を鴨の親子が可愛く泳いでいた。
餌付けされた鳩がそこらをウロウロしていた。
みのりが来た。
真奈が来た。
そして14時を少し過ぎて春香が来た。
4人は自転車に乗ると堤防を通って豊永橋に出て、そのまま環状線に沿って映画館まで行った。
映画を見終わってから4人は映画館の近くにあるミスタードーナツに行って映画の事について話した。
そして宿題やクラスメイト、真奈の彼氏についての話に変わると突然、春香がこんな事を言い出した。
「ねぇ、真奈ってもう彼氏とセックスしたの?」
「ちょっと声大きいよ春香」
三人は辺りを見回した。
特にこちらを気にするような人はいなかった。
「まぁ1回だけね」
「どうだった?デカかった?」
「うーん普通かな、でも上手かったよ」
美香とみのりは顔を赤らめながらクラクラするような好奇心で2人の話を聞いていた。
「ねぇ、2人は?まだ処女?」
「うん、そうだよ」
「したいと思わない?」
「そんな事言いたくないよ」
美香は今まで男と深く接することが無かった。
それは男が嫌いだとかではなかった。只の人見知りであった。
その一方でみのりは美香と幼馴染でありながら小学5年生の時と中学1年生の時に彼氏を作ったが、どれも相手が二股をかけたのが原因で別れた。
小学5年生の時の相手は同級生のとても足の早い男子で、中学2年生の時は1年先輩の野球部であった。
真奈の彼氏というのは2ヶ月前から真奈が付き合っているサッカー部の先輩の事で、それ以前から彼女は3人にその先輩に対して片想いである事を頻繁に相談していた。
その度にやんちゃな春香が積極的に行かないといけない、気をしっかりしなくてはいけないと言って説教していて、高校2年生になって1ヶ月が過ぎた頃、漸く決心して彼女は自ら告白して、無事に付き合う事になったのであった。
春香は先に書いた通り男勝りな性格で、彼女らの通う高校はアルバイト禁止であるのに関わらず週3~4日居酒屋で働いていた。
そして、その居酒屋にいる大学生の先輩をセフレにしていた。
彼女はまだ17歳である癖に既に経験人数は5人以上いた。
「ねぇ、好色部屋って知ってる?」
「何それ?知らない」
真奈がそう言って、美香とみのりも無言で頷いた。