漫画喫茶までの約10分間、アルコールも入っているせいか、ミサキとの会話ははずんだ。
ボーリングの話や大学生活の話、それだけですぐに目的地の漫画喫茶に到着する。
店内に入ると、受け付けのスタッフに声をかけられた。
「カラオケもございますが、漫画コーナーのご利用でよろしいですか?」
「それでお願いします」
「かしこまりました、ブースは二人席ですとこのタイプがございますが――……」
スタッフの指でさされたのは、二人用の洋室タイプと和室タイプのスペースだった。
洋室タイプは二人掛けのソファと机のブースで、和室は畳らしきものがひかれた机だけのスペースだ。
どちらもまあまあ狭く、並んで座ることを前提として作られている。
ミサキをちらりと伺うと、ミサキは「じゃあ、こっちで」と和室タイプのスペースを指さした。
スタッフから個室の鍵を手渡され、二人でエレベーターに乗る。
個室と言えど、天井まで壁が繋がっているわけではないから密室というわけではもちろんない。
それでも、なんだか少し緊張してしまう――
そんなまゆみの表情に気が付いたのか、ミサキは
「ごめんね、大丈夫だった?」と聞いてきた。
「個室の方が良かった?」
「えっ、やっ!大丈夫だよ!ちょっと緊張しちゃっただけで!」
「あはは、緊張って……ごめん、普通に選んじゃった」
「いや、本当に大丈夫!」
手を顔の前でぶんぶん振ると、その様子にミサキがくすりと笑う。
エレベーターを降りて一番奥、奥まったブースが二人の指定されたスペースだった。
「じゃあ、漫画とりに行こっか」
荷物をおいて、二人は漫画の棚へと足を進める。
広いだけあって漫画の種類も豊富で、気になるものはすぐに見つかった。
両手に何冊か持ち、ブースに戻ると、既にミサキも漫画をもってきた後だった。
机の上には何冊か漫画が積んである。
少年誌で連載されている漫画で、もうすぐアニメにもなると人気のタイトルだ。
「あ、それ知ってる」
「本当?なんか面白そうで、読んでみたかったんだ」
「アニメになるんだよね、確か?」
「らしいね、面白かったらアニメもみちゃおうかな、俺」
まゆみもブースに入り、内側から鍵をかける。
どうやら周りのスペースは利用客がいないようで、少しくらいなら話をしても迷惑にはならなさそうだった。
ミサキはごろりと寝そべり、漫画を開く。
まゆみも隣に同じように横たわった。
あまり話したことがない相手だったはずが、いつの間にか緊張もほぐれている。
それはミサキも同様のようで、二人の身体は拳二つ分ほどの距離感で横に並んだ。
しばらく二人は無言で漫画のページをめくり続ける。
そのまま気が付けば、いつの間にか1時間がたっていた。
流石に眠くなってきた。
まゆみがふあ、と大きくあくびをすると、それにつられたようにしてミサキもあくびを続けた。
「眠くなってきちゃったあ……ちょっと寝ようかな」
「うん、俺もなんか眠くなってきた」