まゆみは漫画を閉じて机の上に置く。
ね、とミサキが顔を近づけてきた。
………
………
「腕枕してあげようか?」
「え?」
何を言われているかわからず、まゆみは一瞬ぽかんとした表情になる。
その反応にくすりと笑ったミサキは、まゆみが答える前に腕を伸ばしてまゆみの下に差し出してくる。
「枕ないし、折角だし」
何が折角なのかよくわからない。
よくわからないが――アルコールでふんわりとした頭と、至近距離でしばらく隣に寝そべっていたことで距離感がよくわからなくなっていた。
身体から染み出したあたたかな体温が空気を通してまゆみの肌を撫で、なんとなく、ミサキの身体に触れたくなってきてしまう。
「うーん、じゃあ、折角だし?」
空気に流されてミサキの腕に頭を乗せると、すぐ目の前にミサキの顔。
もう片方の手で頭を撫でられて、「おやすみ」と囁かれる。
「うん、おやすみ……」
そう
アルコールといつもと違う場所での眠りは、とても浅かった。
眠ってから30分も経っていない頃、まゆみの意識はふんわりと覚醒した。
眠った時と同じようにミサキの腕を枕にして――
「あ、あれ?」
いつのまにか、ミサキに抱きしめられていた。
腕が背中に周り、いつの間にか足の先までぴったりとミサキとくっついてしまっている。
困惑した声を上げたまゆみに、ミサキも目を覚ました。
………
………
「ん、どうした――?」
「えっ、いやちょっと、近いな、って――っ」
「いや?」
背中に回っていたミサキの手が、ゆっくりとまゆみの背中を撫でる。
ぞぞ、とした甘い悪寒が背筋を走り、まゆみは息をのんだ。
あたたかな体温に抱きしめられて、身体が心地よさを感じてしまっている。
「ちょっ、ミサキ、くんっ……」
ミサキの胸を押して身体を離そうとするが、うまく力が入らない。
その間にも、ミサキの手がゆっくりと腰のあたりに降りてくる。
「あ、ね、ちょっと……」
尾てい骨のあたりを優しく円を描くようにして撫でられて、まゆみの身体が脱力してしまう。
(うそ、こんな――)