3日前の晩、清美は仕事が終わって電車で帰ってきた。
彼女は買い物をするため駅前にあるセブンイレブンに入った。
中に入って、お酒の所に行くと、一人の背の高い男の人が居た。
それは、タケルであった。
「あ、清美さん?覚えてる?俺の事」
清美は直ぐにわかったので、頷いた。
清美は彼をあまり見る事が出来なかった。
彼の端正な顔を見ると、不思議と緊張してしまった。
あの時の、今まで隠れていた彼に対する恋心が、激しい渦を巻いて蘇った。
清美はずっと緊張していたせいで、その後彼とどんな会話をしていたか全く覚えていなかった。
そして気付くと、清美はタケルの家に居て、二人は熱い一夜を過ごしたのだった。
………
………
………
再びラインが来た。
ー大事な話があるんだ
清美がそのメッセージに既読をつけて5分後、彼から電話が来た。
これに出たものか無視してしまうか…。
ラインの独特の着信音に我慢出来ず、とうとう出てしまうと、彼の優しい声の誘いに了承して、支度してから彼の家に向った。
あの日の記憶はほとんど無いはずなのに、彼の家のある場所だけは正確に覚えていた。
「さぁ、上がって。あ、上着は預かるよ」
私は何となく見覚えのあるリビングの、ソファに彼と並んで座った。
彼はビールとおつまみを持って来た。
二人は乾杯して、飲んだ。
清美は
「清美さんもこれ、食べな。これね、すごく美味しいから。北海道の親戚から貰ったんだけどさ」
清美は恥ずかしさか酔のためか、紅潮して彼女は目の前のテーブルの上にある白い皿に盛られたホタテの貝ひもを一つまみ口に運んだ。
全く味がしなかった。
「ねぇ、美味しいでしょ」
「う、うん…」
タケルは清美の返事に満足したのか、嬉しそうにビールをグイッと飲み干した。
「話があるって言ってたよね、何?」
清美はこの状況にいたたまれなくなって、悪意の含んだ、どこか冷淡な口調でこう聞いた。
この時もずっと俯いたままだった。
「ああ、そうだったね。いや実はさ、清美さんに見て欲しい物があってさ。ちょっと来て」
こう言うとタケルは立ち上がり、顔を上げた清美に手招きして、足早にリビングから隣の寝室に入ってしまった。
清美が遅れて、矢張り見覚えのある様な彼の寝室に入ると、タケルは押入れを開けてその中に入って行った。
清美は呆然とそれを見ていたが、間もなく自分も入らないといけない事に気付き、彼の背を追いかけて入った。
押入れの中には、隠し扉の様なものがあり、清美はその中に、僅かに腰を低めて通ると、何だか異様な雰囲気のある部屋に出た。
そこはラブホテルの様な色彩だなと思って、良く見てみると、それはラブホテルであった。