「なんでそんな事ができるの?信じられない!」
私は鞄とコートを脇に抱えてワンルームの入り口でそう叫ぶ。
隣近所の迷惑にならないよう、ドアは閉めて声も控えめに。
変に冷静だった割に涙は止まらなかった。
「ごめん…」
「パチンコと競馬でお金が増えるわけないでしょ!それに、私が上げたクリスマスプレゼント…」
3年付き合った4歳年上の彼氏。
彼が貧乏なのはよく知っていた。
いつも奨学金の返済に税金の支払いにと様々な支払いに追われていて、自由に仕えるお金もなくデートだって我慢だらけ。
だけど、まさかギャンブルに手を出すなんて思ってもいなかった。
「…今月給料足りなくて、他にどうしようもなくて…」
「だからって…プレゼント売るなんて…」
彼が一度手にしてみたいと言っていたハイブランドの財布、一生懸命お金を貯めて選びに選んだプレゼント。
もう無理だと思った。
彼の事は好きだったけど…
「おはようございます
「おー、おはよう菜奈ちゃん」
一晩中泣いて酷く痛む頭に脳天気な班長、山田の声が響いた。
彼は缶コーヒー片手に始業前の支度をしながら私をちらっと見た。
「菜奈ちゃん今日元気ないな。顔色悪いし、二日酔い?」
「違いますよー山田さんじゃないんですから」
「はは、言うな~」
泣いた目は普段より濃い化粧で誤魔化している。
とは言え毎日顔を合わせている相手には悟られるものだ。