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「めぐ」
あれからあたしは具合が悪いと言って早退した。
あのあとみんなに浮気だのなんだのって言われて頭にきたから。
第一あれが浮気なら、航大だって浮気に入るでしょ。
聞きつけた航大はきっと笑うために来たんだろう。
今あたしは自分の部屋でベッドに横になっているところ、わざわざ来てくれた。
「‥‥‥」
「めぐ、浮気したって?」
「別に‥‥‥」
「俺の知らない男とLINEって、なにそれ」
どこから聴いてきたんだか‥‥わからないけど誰かとLINEするのって航大の許可がないとダメなの??
あたしは不思議で頭にクエスチョンマークを付けてみた。
すると真面目な表情で航大があたしを押し倒して上にまたがった。
あまりにも予想外すぎる体制に驚きを隠せないあたし。
「なにすんの!?」
「何って、俺のモノってマークつけんだよ」
「はぁ?ちょっと航大どいて‥‥」
「黙れって」
怖い表情の航大は、無理やりキスをしてきた。
こんな展開なんて、予想だにしなかった。
でもなんであたしは航大に怒られてこんな目に遭わなきゃならないの?
ちょっと横暴だよ、航大!!
「航大!航大ってば!」
「この手で‥‥‥」
航大はあたしの両手首をつかんで頭上に固定させる。
「この手で、LINE交換した?」
あたしの手に噛みつくから、少しだけピリッとした痛みが走った。
「この口であいつと話したんだ」
そう言えば、航大はあたしにキスをしてきた。
食いしばって舌の侵入をふさぐが、ヌルヌルと唇をなぞられれば呼吸が苦しくなって口を開いてしまった。
そこに航大の舌が入ってきて、あたしの舌に絡ませては吸い付かれた。
なんだかすごくえっちな気分になる。
第一、友達相手にここまでする!?あたしだって陽菜に航大がいつも取られて腹立てるけど、こんなことまではしないよ。
息が上がってくると、航大がそれに気づいて唇を開放してくれた。
「そんな潤んだ目で俺を見るな」
航大は切ない表情をしている。
「だって‥‥あたし初キスなのに‥‥‥」
「!!」
あたしは泣きそうだよ。
そりゃぁ好きな人にこんな形であれキスされて嬉しいよ。
だけどね、物事には順番が合って、気持のないキスとか、どんなに相手が好きな人でも悲しい。
嬉しくないんだよ、航大。
「ごめんな‥」
航大は謝ってそのまま帰ろうと部屋の玄関まで歩いた。
あたしは帰ってほしくないから、後ろから抱き着いてしまった。
大きくて暖かい航大の背中は、今は誰のモノだろうか。
やっぱり陽菜かな?
それともあたしの知らない人?
苦しいほど、切ないほど、航大が誰よりも好きなのに。
どうやったらこの想いを完了させることが出来るのだろうか。
「‥‥めぐ。俺さ、本当は‥‥めぐが好きなんだ。ごめん」
「え」
「だから浮気とか騒いで‥‥ごめんな。めぐには俺だけだって思い込んでた」
え!?それってほんとうなの!?
「航大、あのさ」
「でももう忘れるわ。悪い。じゃ、帰るわ」
そんなかんたんに言えるくらいの感情だったんだ。
もう忘れる、なんてあっさりと言ってくれるじゃん。
だったらあたしだって、もういいよ。
「航大、二度とあたしにいちごあめ買わないで。あたしも忘れるから。」
その言葉を聞いて、航大は振り返らずに家から出て行ってしまった。
後悔なのか、名残りなのか、心が頭と一致しないでバグったから、頭痛がする。
苦しいけど、忘れるから、あたしだってもう、航大に甘えないから。
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「‥‥‥寝れない」
その日の夜は、まったく眠りにつけなかった。
目をつぶっては航大を思い出して、ベッドで寝ている自分を考えては航大とのキスを思い出す。
ほんとうにあたしはこの道の選択で良かったかな。
あたしがあそこで正直に、素直になってたらまた変わってたかな。
今さら後悔してももう遅いだろう。
‥‥だけどね。
「やっぱりこのままはいや!」
気が付けばあたしは深夜1時にベッドから起きて着替えて、外へ飛び出した。
「!!」
玄関に出れば、こんな夜中なのに航大がうろうろしていた。
「こう、だい?」
「!?なにやってんだこんな夜中に!!」
「それはこっちのセリフだよ」
それから少しだけ間があって、話そうとした瞬間に、雨が降り出した。
「航大とりあえず中に入って!」
「おぅ!」
ガチャっと鍵を閉めると、ふーと息をつく。