「龍馬さん」
「だから下の名前―・・・・」
「龍馬さん」
ことりは、頭が真っ白になり唖然としている龍馬に向かってニコッと笑って見せてみた。
龍馬は止まっている。
「あたし、柳瀬さんのこと名前で呼びましたよ?どうしますか?」
「な、ん、で・・」
「こういうことですっ」
そう言ってことりは龍馬の首に抱き着いてキスをした。
「あたしは最初わかりませんでした。けど龍馬さんが好きです」
「・・・・でもなんであいつと・・・」
「久保さんはもちろん好きです」
「意味わかんねーし・・」
「久保さんは顔がタイプで好きでした。だから付き合えた時にはすべてを好きになろうと言うことを自分に念じていて・・その結果が下の名前で呼ぶことだったんです。好きだから呼びたかったのではなくて、好きになりたかったから、呼ぶようにしていました」
まだハッキリ理解していない龍馬の左ほほにちゅ、と一瞬キスをしてみせることり。
「でもわかりました。あたしが好きなのは・・・名前で呼びたいくらい好きなのは柳瀬さんです。好きです、龍馬さん」
そんな健気に必死にことりは龍馬を見た。
そこでようやく龍馬が反応した。
「キス、したい」
「はい」
「同僚とか、あいつへの反抗心じゃなくて、普通の」
「はい」
「俺を好きだというならうけ―」
言い終わる前にことりは回した腕を引き寄せて、自分から目を閉じてキスをした。
噛みつくようなキス。
何度も何度も、舌を絡めた濃厚で甘くて、恋というマジックがかけられているキスだ。
気が付けば龍馬も目をつぶってそのキスを堪能する。
「・・・だめだ。俺無理。会社いけねぇや」
「?どうしてですか??」
「この次の駅で降りるぞ。このくそ満員じゃことりの肌に触れられるキモ男が現れるからな。それに、我慢できねぇから。もっとことりに触れたい」
違う方向を向いて話す龍馬。
どうやら照れ隠しのようだ。
本当に可愛くて仕方ない龍馬へ気持ちが走ることりだった。
「いいですよ。あたしも、龍馬さんとくっついていたい」
「・・・・はい言ったな?」
「言いました。女に二言はありません」
「なら、いっか」
「はい」
そして二人は次の駅のすすきので地下鉄を降りた。
そのまま朝からラブホテルに行くことになった。