高校生になれば、何かが大きく変わるんじゃないかと思っていた。
実際にはそんな事なくて、ただただ勉強して、友達とお喋りを楽しんで……お小遣いの額が増えて、門限が少し遅くなったくらい。
いよいよ受験勉強に力を入れなくてはというこの時期、私は強いストレスを感じていた。
将来の事なんてまるで見えていなくて、毎日を消費していくだけ。
そんな中で…
………
………
…私はついに悪癖を覚えてしまった。
………
………
万引きである。
悪いことをしているという自覚はあるものの、どうしてもこのスリリングな感覚がやめられない。
今まで一度も見つかった事はないし、一種の度胸試しみたいなものだった。
自責の念に駆られる事はあるが、つい欲しくもないものを盗ってしまう。
そんな私の悪癖を、誰も知らないし誰も気づかない。
そう思っていた。
「ちょっと、君」
いつもの様に、欲しくもないお菓子をこっそり鞄にしのばせ、店を出ようとした所だった。
マズい………そう思って走り出そうか迷っている間に、店員は私の鞄をしっかりと掴んでいた。
どうしよう。
心臓がバクバクと脈を打ち、冷や汗が流れる。
警察行き?
学校は?
親は?
色んな思考が頭の中を駆け巡っていった。
「こっちへ」