背後に忍び寄ってきた淫猥 な視線
厳しい受験戦争を勝ち抜き、春からは関西トップクラスの進学校である某有名高校に進学
することが決まった私、
いよいよ新たな人生がスタートすると意気込んで高校生活を迎えようとしていた私に、
いきなり試練が待ち受けていたのだ。
中学の3年間は、ずっと塾に通ったりしながらの勉強漬けの毎日で、恋愛なんて二の次。
このように恋愛お預け状態だった私だが、そんな私にも憧れていた一人のある男子生徒が
いた。
しかし、その男子生徒というのは、私と同じ中学校に通う男子生徒ではない。
私は部活ではバスケットボール部に所属していたけど、たまにある地元の同じ市内の
中学校同士での対外試合に参加していた時のこと。
その対外試合では、市内では私の通う中学校に一番近くにある中学校とよく試合を組む
ことがあったのだけど、実は、その中学校に憧れの男子生徒がいたのだ。
彼の名前は、
彼もバスケットボール部で、男女共に同じ日に対外試合を組んでいたので、女子の試合
の後に引き続き行われる、男子の試合で彼を見かけることができた。
初めて見た彼は、バスケットボールが上手で、市内の全中学校の選抜メンバーにも
選ばれるほどの実力。
見た目も爽やかイケメンで、芸能界でも通用するよどのルックスの持ち主。
しかも、噂で聞いた話によると、運動だけでなく、勉強もかなりできるようで、学力は
学年でもトップクラスの成績だったらしい。
健輔君は私たちの中学校のバスケットボール部の女子生徒たちの間でも人気があり、
私だけでなく、みんなの憧れの的だった。
一方、私の方はというと、勉強の方はからっきしダメで、中学1年の夏休みが終わる頃
までは、学年でも下から数えた方が早いくらいの成績だったのだ。
きっと、彼はどこかの進学校を受験するだろうから、私のようなおバカちゃんには、
全く縁のない人なんだろうなぁ・・・、と徐々に彼のことは諦めるようになった。
そんな勉強嫌いの私だったけど、両親が高校の教師ということもあり、嫌でも勉強を
せざるを得ない状況にあった。
週3回のペースで塾にも通い、休みの日も両親に交代で教えてもらう、勉強漬けの日々。
バスケットボール部も3年の夏に行われる大会を最後に引退し、それ以降は、高校受験に
向けてラストスパートに入っていく。
当然、憧れの彼のことはもう対外試合で見かけることもなくなり、彼の存在も私の心の中
からはすっかり消え去って、忘れた存在になっていたのです。
高校受験まであとわずかとなった3年の冬休みには、頑張ったかいもあり、私の学力は
アップし、それに伴い、成績もグングン上昇していました。
そして、何とか第1志望だった関西ではトップクラスの進学校である某有名高校に進学
することができたというわけです。
これでやっと勉強漬けの地獄の日々から解放される!
しかも、驚いたことに、私が猛勉強の末に入ったその高校に、健輔君も受験をして
合格していたのだ。
入学式当日に、初めてクラスメートと顔を合わせた時に、健輔君が同じクラスにいる
ことに気が付いた時は、嬉しさのあまり、飛び上がって喜んでしまった。
ようやく彼氏を作って待ちに待った恋愛を満喫できるんだなと、楽しみで仕方がなかった
私だったけど、まさかこんな試練が襲ってくるなんて想像もしていなかった。
………
………
………
毎朝、私はK電鉄という電車に乗って通学し、高校の最寄りのS駅まで乗っていく。
しばらくは、特に何もトラブルなく普通に通学することができていましたが、初登校から
ちょうど1週間がたった日に、その試練はやって来た。
私の友達はみんな地元の各公立高校を受験し、それらのいずれかに通うことになっていた
ため、高校は友達とは別々。
一方、3つ隣の市にある私立高校を受験し、合格してそこに通うことになった私は、
毎朝、寂しく一人ぼっちで通学している。
地元の公立高校に進学してたら、こんな寂しい思いもしなくて済んだのだろうか・・・、
そんなこを考えながら、満員電車に揺られ始めて1つ目の駅に到着した時だった。
その駅は、多くの乗客が乗り降りする大きな駅で、その駅に到着するといつも多くの乗客
で、より一層電車内がギュギュウの寿司詰め状態になる。
そして、電車が発車してから30秒ほどが過ぎた時、突然背中がゾワゾワッとしたので、
ふと後ろに目をやると、何やら人の視線のようなものを感じた。
チラッと見ただけなので、はっきりとはわからなかったけど、おそらく、私の背後には
男性が立っているなとはわかった。
しかし、高校に通い始めて1週間目になるけど、満員電車とはいえ、こんなに私の背後に
ピタッとくっつき、何なら少し圧迫するぐらい密着されることは今まではない。
さらに、30秒ほどが過ぎた時、スースーというかすかな音が聞こえたのと同時に、
後頭部辺りに熱い空気のようなもの感じました。
それは、背後に立つ男性の鼻息だったのです。
一瞬、えっ?!と驚きましたが、私の後頭部に男性の鼻先が密着しているのがわかり、
私は一気に鳥肌がたちました。
そして、その直後、私のお尻に何かがモゾモゾと動くのを感じ、その瞬間、私は痴漢され
ていることに気付きました。
背後に忍び寄ってきた淫猥な視線。
ただでさえ新しい高校に通い始めたばかりでまだ心細い状況なのに、この日から毎日痴漢
に襲われる、恐怖の電車通学が始まったのです。