「ごめんなさい!急いでて‥‥」
「いてぇ‥‥おいおい思わずコーヒーこぼしたじゃねーか」
「ごめんなさい!」
「‥‥‥まぁいいや。そこの車が俺の車で、タオルあるから付き合え」
なんだか嫌な予感がして怖くて断った。
「じゃぁ車の後部座席のボックスにタオルから持ってきてくれ。それならいいだろ」
「‥‥‥はい」
あたしは鍵を受け取る。
迷いながらも、怖いながらも、少しだけ震える手を抑えて車に向かった。
スーパーの駐車場にはこの男性の車しかなかった。
すぐにどこかわかったからそそくさと鍵穴に鍵を差し込んで回す。
カチャン、と音が鳴り、車のドアが開いた。
ぎぃ、と鈍い音を出しながら開けば、あの男性が言っていたボックスがあった。
手を伸ばして取ろうとした瞬間に、後ろから座席に詰められる。
「きゃ!」
すぐに振り返ったけど、逆にその反動でより奥に詰め込まれてしまった。
「な、!!??」
「悪いねぇ
あたしの名前をフルネームで知っていた。
誰?誰なの??なんであたしの名前を?怖いよ、助けて、誰でもいいから‥‥‥っ!
「たすけ―‥‥」
ハンカチかタオルのような綿の何かが口の中に入ってきた。
………
………
終わった‥‥‥。
あたしの人生はここで終わるんだ。
あたし間違いなく殺されるんだ。
あぁ、翔平‥‥‥。
永遠にあなたと一緒に生きていけると誓ったのに‥‥‥。
全力で泣いていれば、真っ黒い帯のようなもので目を隠された。
死ぬ‥‥‥死ってこんなに唐突に訪れるのね。
涙が止まらない。
けどそれは流れることを知らずで、目隠ししている帯のようなものに吸収されるだけ。
手足はすでに拘束されていて、抵抗はできないんだ。
その後はあまりのショックさに気絶していた弱いあたし‥‥‥。