「セックスの練習相手になって下さい!お願い!」
信吾は大きな声でそう言うと、雅美の目の前に深々と頭を下げた。
雅美は何の事か全くわからなかった。
耳を通り抜けて頭に入って来た、信吾の口から発せられた言葉をゆっくりと咀嚼して、それが砕け落ちると、舌の上で飴玉の様に転がした。
それは舌の上で段々と溶けてくる。
そして徐々に淫靡な匂いが口内に漂い、それは鼻をピクリと動かした。
信吾は雅美の弟である。
信吾は非常に真面目な性格をしていて、二人が幼い頃、雅美が散らかした玩具などを一人で片付けていた程立派な人間だった。
そんな信吾が自分の姉にセックスの練習相手になってくれるよう乞うのは、何故なのだろうか?
雅美には全く見当がつかなかった。
ん?セックスの”練習相手”?…。
「な、何言ってるの?馬鹿じゃないの」
雅美の声は、少しばかり震えていた。
雅美の顔は赤くなっていた。
信吾は頭を上げると、その表情は如何にも真剣そのものであった。
………
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「…という事で、姉ちゃんに練習相手になって欲しんだ」
事情を話し終わった信吾は、ほんのりと頬を染めて、何やらきまりが悪そうに体をモジモジさせた。