気が付けばあたしはまだここに立っていた。
昔別れた彼氏の自宅マンションの前。
いつも夢を見る。
ここから出てくる彼氏を、抱きしめている夢‥‥‥。
もやもやしているけど、確かに夢なんだ。
今日もまた、その夢の最中だ―‥‥。
‥‥‥
‥‥‥
「げ。小銭忘れた」
「もーダメじゃないのゆうくん」
「だって忘れたんだもんしかたねーだろ」
「だったらあたしが買うよ!」
このいちゃつきは‥‥あほほどいやになる。
「すみませんね店員さん。あたしの彼氏が‥‥‥あ、まだ彼氏じゃないよね、ごめーん!!!」
見せっぱなしは本当に胸糞悪い。
だからあたしは、コンビニのレジとかはうまくいかないことが多いんだ。
あたし自身、みじめに感じるから。
だってさ‥‥‥何が悲しくて他人の恋人劇場見させられて、ただ働いてる人生のあたしを演じなきゃならないの!?
おかしいでしょ!!!
「はーい、ゆうくんに貸し一つだねー」
「しかたないな。」
「あ、でもゆうくん大変!二円足りない!!」
だから‥‥‥あたし‥‥‥
「仲よろしいんですね。今日もここはあたしが払っておきますので、ごゆっくりどうぞ」
ずたずたに切り裂いてやるんだ!
何がって?だって‥‥‥この男は他にも女いるんだよね。
「え‥‥‥今日もって‥‥‥どういうこと??」
ほら、釣れた。
「いや、待って、店員さん。初対面の俺に何言ってんの?」
「説明してよゆうくん!」
そうだね、この男は
だから毎回あたしに言われて女を逃がしてる。
良いざまだ。
「もういいよ‥‥‥あたし知ってるんだ。ゆうくんには他にも女の子いるのは‥‥‥」
「
「ありがとうねゆうくん。今度会えたらいっぱい遊ぶからね!」
「真紀!!真紀ーーーっ!!」
はい、今日もお疲れ様でしたー。
「‥‥‥いじめか」
「はい、なんでしょう」
「こらー!いつになったら俺を怒らせれば気が済むんだよ!!」
「さて、退勤時間なので帰りますか。じゃ」
「じゃーじゃない!!いい加減にしろよ唯!」
「