恋のはじまり

怖くないよ(1)

気が付けばあたしはまだここに立っていた。

昔別れた彼氏の自宅マンションの前。

いつも夢を見る。

ここから出てくる彼氏を、抱きしめている夢‥‥‥。

もやもやしているけど、確かに夢なんだ。

今日もまた、その夢の最中だ―‥‥。

‥‥‥

‥‥‥

「げ。小銭忘れた」

「もーダメじゃないのゆうくん」

「だって忘れたんだもんしかたねーだろ」

「だったらあたしが買うよ!」

 

このいちゃつきは‥‥あほほどいやになる。

「すみませんね店員さん。あたしの彼氏が‥‥‥あ、まだ彼氏じゃないよね、ごめーん!!!」

見せっぱなしは本当に胸糞悪い。

だからあたしは、コンビニのレジとかはうまくいかないことが多いんだ。

あたし自身、みじめに感じるから。

だってさ‥‥‥何が悲しくて他人の恋人劇場見させられて、ただ働いてる人生のあたしを演じなきゃならないの!?

おかしいでしょ!!!

 

「はーい、ゆうくんに貸し一つだねー」

「しかたないな。」

「あ、でもゆうくん大変!二円足りない!!」

だから‥‥‥あたし‥‥‥

「仲よろしいんですね。今日もここはあたしが払っておきますので、ごゆっくりどうぞ」

ずたずたに切り裂いてやるんだ!

何がって?だって‥‥‥この男は他にも女いるんだよね。

 

「え‥‥‥今日もって‥‥‥どういうこと??」

ほら、釣れた。

「いや、待って、店員さん。初対面の俺に何言ってんの?」

「説明してよゆうくん!」

そうだね、この男はりないんだ。

だから毎回あたしに言われて女を逃がしてる。

良いざまだ。

 

「もういいよ‥‥‥あたし知ってるんだ。ゆうくんには他にも女の子いるのは‥‥‥」

真紀まき、待って」

「ありがとうねゆうくん。今度会えたらいっぱい遊ぶからね!」

「真紀!!真紀ーーーっ!!」

 

はい、今日もお疲れ様でしたー。

「‥‥‥いじめか」

「はい、なんでしょう」

「こらー!いつになったら俺を怒らせれば気が済むんだよ!!」

「さて、退勤時間なので帰りますか。じゃ」

「じゃーじゃない!!いい加減にしろよ唯!」

ゆいって呼ばないでいただけますか?」

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