「この辺で少し休憩するか」
「はい、そうですね」
「あ、ちょっとトイレ借りても良いかな?」
「大丈夫ですよ、場所、わかりますか?」
「うん、大丈夫」
彼の背を見送ってから、私は目の前に置いてある数学のノートをぼんやりと眺めた。
………
………
今日、家には私と彼以外、誰も居ない。
父親は出張で、母親は親友の母親のお通夜の為東京へ行っていた。
昨年の春、高校生になったばかりの私の所に、家庭教師として聡太が来た。
彼と初めて会った時、私は失神しそうになった位に彼がカッコ良かった。
白人程ではないにしても鼻筋がくっきりしている。
大きく鋭い目、薄く柔らかそうな、見る人の官能をくすぐる唇、綺麗な肌、オシャレな髪型。
そして何より紳士であった。
私のくだらない質問にも、関係の無い相談にも、丁寧に答えてくれた。
………
………
その時の彼の声!
ああ、思い出すだけでとろけそう!
何と形容したら良いだろうか、心臓が鼓動を残しながら消えてしまう、いや、私の体が彼の体に優しく
それから指先の美しさ。
毛の1つ生えない、白く細い、1本1本長い指に、宝石のように美しく丸みを帯びた爪。
あ、彼の足の指はどうなんだろう…?
初めて会ってから1ヶ月程経って、私は聡太の彼氏になった。
それだけでも幸せなのに、実はこの時、彼から付き合って欲しいと言われて、それで付き合ったのだ!
その時の彼の声も、熱く美しかった。
………
………
………
「
付き合ってから2年程経っているけれども、私と聡太は1度も体の関係が無い。
だから、私は今日の夜を、彼との熱い時間にする為に、色々と思案しているのだ。
だが中々思い付かない。
………「聡太さんと、愛し合いたいです…駄目ですか?」
………「私、ムラムラしちゃった。そう言えば今日、家には私しか居ないんだけどな…」
いや、これじゃ、駄目だな。
もっと直接的で良いかな?
………「聡太さん、私を、抱いて下さい。」
………「私とセック…」
いやいやいや、恥ずかしい!