赤地に白い水玉、それに緑と金色のリボンが着けられたいかにもクリスマスらしい袋が宙を舞う。
可愛らしいその袋は男の顔に調度良く当たると彼の手の中に落ちた。
「バカじゃないの!?最低!」
「そう言うなって」
「近寄らないで」
「…ごめん」
12月24日、シングルにとってはただの年末、カップルや家族にとっては身も心も浮足立つクリスマスイブ。
「ごめんってば、一応ちゃんとしたプレゼントも用意してるから」
「…ほんと?」
「ほんとほんと!前に優衣が欲しいって言ってた鞄!」
彼はそそくさとクローゼットから大きな袋を取り出し優衣に渡す。
品の良い袋と包み紙には彼女の好きなブランドのロゴがこれもまたしっとり落ち着いたデザインで押されていた。
「わぁ…覚えててくれたんだ」
彼女は素直に “嬉しい、ありがとう” と感謝を口にする。
しかし彼が大事そうに抱える赤い袋が目に入るとその顔は再び不機嫌さを取り戻した。
「だから、な?せっかく買ったんだしコレ、一回くらいさぁ…」
「…やだ」
袋の中にはアダルトグッズの王道とも言えるバイブ、イボイボや段差がついていて見るからにえげつない、それも結構な大きさのものが入っている。
「鞄奮発したからさ、お願い!一回だけ!それに今夜は性なる夜なんだし…キリストとマリアもヤりまくってたって絶対!」
「…12月25日はキリストの誕生日だよ」
「じゃあ24日は?」
「…マリアが陣痛に苦しんでた日じゃない?」