不倫・禁断の恋

ふたりの上司との三角関係…

「ことりーことーー」

どこからか声がした。

いつも寝起きが悪いことりは、その声が誰かは詮索もできない。

しかしなんだか焦っている自分がいることり。

少しだけ、と目をかすめて開くとそこにはスマートフォンが午前6時半を知らせていた。

「!!!!!!」

慌てて飛び起きた。

速攻でバスタオルをもって自宅の一階の浴室までダッシュする。

横にはお風呂シャワーのお湯をセットしている母がいた。

「おはよう母さん!!!!!!」

「おはようことり。寝坊はなかなか抜けないね」

「でも会社の寝坊は学生よりも痛々しい!!!」

「なら早く起きなさい」

「はい!!!」

ピッとお風呂のスイッチを入れてくれた母に感謝しつつパジャマを脱ぎ捨ててシャワーに入った。

「ことりー。ごはんは食べていきなさいねー」

シャワー中のことりに話しかけると大きくうん!と返事をしていた。

シャワー後、髪の毛を乾かしながら食パンを頬張る。

今日はなんとなくバニラのクリームを塗って食べている。

速乾で有名なシャンプーを使っているのであっという間に乾き、そして食パンも食べ終える。

「ほらほら、胸元にバニラがついてるよー」

母は笑いながらティッシュで拭う。

しかし時間も時間なので「ありがとう」と言ってかばんを持って自宅を出て行った。

通勤は地下鉄だ。

地下鉄駅までは歩いている。

日傘をさして歩いていると、途中で走っていた女性とぶつかった。

「きゃっ!」

「わわっ!!!」

こういう時に女子力は出るのだろう。

「きゃ」は、ぶつかってきた女性で、「わわっ」とはことりだ。

学生時代はさっぱり系だったので女性らしいというところは多少かけているようだ。

「すみません・・・あの、良い香りしますね」

ぶつかってきた女性は笑顔でそう言った。

「あ・・・バニラかも。ワイシャツの襟かな。朝ご飯がバニラ食パンだったので」

二人はふふっと笑いあって、それから急いでいた女性はことりと元気に別れてまたダッシュしていった。

またぶつかりそう、となんとなく思いつつも、自分も時間が危ないことに気づいて早歩きを始めた。

地下鉄に降りていくと、いつもより1本遅い地下鉄がちょうど来るみたいだ。

改札を通っていつもの乗り場で待機する。

その間に思い出した。

 

―あたし、社会人デビューして彼氏できたんだ~♪

と。

久保透くぼとおるという、先輩上司だ。

入社してから見た目がタイプで好きだった。

その人とは対照的な柳瀬龍馬やなせりょうまさんという仲が良い上司がいる。

彼は性格が私好みの「ドツボ」だったので仲良くなっていた。

正直に言うと、最初は龍馬だったら即付き合ってもよかったし、楽しいんだろうな、と想像をしていた。

しかし実際に告白されると気持ちは一気に透に持っていかれていたことに気づいた。

ただ本音はまだ迷う自分もいる。

これは社会人デビューの魔法かとも思うことり。

選べる、だなんて失礼なことだが、うーんと悩む。

どちらも本当に好きだから、だから 悩んでいる。

そのことを感づいた透は行動に移していた。

それは、キス。

告白して考えていた時に、先に謝るわ、と言ってからキスをされた。

いやではなかった。

本気でときめいたしうれしかった。

そのあと、ことりはすぐさま「よろしくお願いいたします」とぽろっと言ってしまった。

そして今に至る。

 

「あ、地下鉄きた」

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