不倫・禁断の恋

久々に遊びに来た弟の友達…

「え、ちょ、ちょっと待って」

「俺、さきさんのこと、ずっと好きだったんですよ」

「そ、それは嬉しいけどさ!」

「そんな人のこんな姿見ちゃったら、もう我慢できません……」

「え、えええ!」

みなさん、大変です。

私は今、下半身裸のままで、弟の友達に襲われています。

 

時はさかのぼること、ほんの一時間前。

「ただいまー。さ、入って入って」

「お邪魔します」

私がリビングでお茶を飲みながら漫画を読んでいると、弟が帰ってきた。

誰かを連れてきたらしかった。

「咲さん、こんにちは」

「おお、けんくん?久しぶり。ゆっくりしていってね」

私の一つ下の弟である悠斗ゆうとが連れてきたのは、彼と同い年の友人、健くんだった。

健くんは悠斗が中学のころからの付き合いだから、もう四年目になるだろうか。

同じ高校に入ったとは聞いていたが、しばらく遊びには来ていなかった。

久々に見ると、やっぱりいいな、と思った。

健くんはめちゃくちゃイケメンなのだ。

うちの悠斗も、家族の目線から見てもそこそこ顔は良い方だと思う。

でも、健くんがとなりに立つとそれも形無しだ。まあ仕方ない。

しかも、健くんはイケメンなだけじゃない。

中学のころから見ているが、かなり礼儀正しくてさわやかで、好青年を絵にかいたような子なのだ。

ただし、勉強も運動もできる、みたいな秀才タイプではなく、そこは割と平凡らしい(そうはいっても、必ず上半分になるくらいにはできるそうだが)。

そんなイケメンが久々に家に来たものだから、私もちょっとドキッとしてしまった。

実をいうと、健くんは結構私のタイプだ。

顔ももちろんだが、性格もいい。

何度か私も交えて遊んだことはあったが、その時もとても素敵だった。

割と性格的に相性もいいと私は勝手に思っている。

きっとイケメンの彼には彼女の一人や二人いるのだろうが、ついでに私ももらってくれないだろうか、なんて思ったりもしていた。

だからこそ、こんなだらしない部屋着を見られてしまったのは少し恥ずかしかった。

健くんが来るんだったらもうちょっとましな服を着ておいたのに、悠斗のやつも気が利かないもんだ。

まあ人に会えないような恰好をしていなかっただけましだと思おう。

無地の色付きTシャツにショートパンツ。

まあコンビニくらいなら行ける恰好だ。

それからすぐに、悠斗たちがしゃべりながら階段を上っていくのが聞こえてきた。

そうだ、ジュースでも持っていこう。せっかくだし、健くんとも少しお話をしたい。

そう思った私は、さっそく準備を始めた。

棚からグラスを二つ出して、コーラを注いだ。

それからお菓子も出して。

お盆に盛り付けた。

ポテトチップスとコアラの〇―チ。

とりあえずこんなものだろう。

ちょっといい恰好に着替えようか、でも、本気出してる感がでるのもな、なんて思ったから、結局私はそのままの恰好で悠斗の部屋に向かった。

階段を上って私の部屋の隣が、悠斗の部屋だ。

中からはごそごそと音がしていた。

私はドアをノックした。

「お菓子いるー?」

「もしかして持ってきてくれたの?ありがとう!」

そう言いながら、悠斗が中から開けてくれた。

「はい、これ」

「ありがとう姉ちゃん、気が利くねぇ」

「まあね」

悠斗はにやにやしていた。

その理由はもう少し後でわかるのだが、その時はもちろんそんなこと知らないので、なんだ気色悪いな、なんて思っていた。

すまんな悠斗。

姉ちゃんももし悠斗の立場だったら、同じような表情をしただろうと思うからさ。

「お気遣いありがとうございます、咲さん」

「いえいえ」

イケメンスマイルで、健くんは私にお礼を言ってくれた。

くーっ。まぶしい!

その時の私は、今私の身に起きているこの惨事を知らないので、のんきにそんなことを思っていた。

「最近来てなかったけど、何かあった?」

「いえ、なかなかタイミングが合わなかっただけです」

「そうそう、健は部活があったからさ」

「何部?」

「陸上です」

「そういうことね」

健くんは中学の頃も陸上部をやっていた。

そう考えると自然な流れだ。

「たまたま今日俺の部活と休みがあったから、来てもらったの」

「そっかそっか。んじゃま、健くん、ゆっくりしていってね」

あまり長居するのも申し訳ないと思って、私はそれくらいで会話を切り上げた。

帰り際に見た健くんの表情は、やっぱりイケメンスマイルだった。

そのスマイルをしっかりと焼き付けてから、私は悠斗の部屋を出た。

それから、リビングへ戻ってお茶と漫画を取り、自分の部屋に戻った。

部屋でベッドに寝転がって漫画を読んでいると、隣から妙な会話が聞こえてきた。

これを聞いてしまったのが、私の今日の最大のミスだった。

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