マニアック

悪女の血

まだ小学生の事で腹筋や胸筋がたくましく浮き出てきた訳ではないけれど、バスケをはじめて2年が立った春、兄は身長が伸びた事もあるが身体が今までの倍位に大きくなって、ふっくらしていた頬も無駄な肉が削られて凛々りりしくなり、四肢は動かしたりする度に筋肉の筋が美しく浮き出て来るようになった。

私は毎晩のように兄と一緒にお風呂に入りながら、シャワーの水が兄の屈強な身体を洗い流す景色を恍惚こうこつと眺めていた。

流れ落ちる水の透明な筋が兄の清らかで白いローマ彫刻のような脚を伝って行くのが、何とも神秘的なものに感じられて、自分はいつもありがたいと思いながら兄を眺めていた。

兄の身体の変化した2年間に、当然私の身体や精神にも色々と変化があった。

身長が伸びたり胸が少しだけ膨らんできたりというのがあったが、何よりこの時期に私は自分の性癖をはじめて自覚したのだった。私はそれまで、そしてそれ以後も、お風呂上がりに自分の仄かに赤く火照った白い脚を只ひたすらに手で撫で回したり爪を立ててこちょこちょしたり、頬を膝頭や太腿の内側の所に擦ったりするのが癖になっていて、それをしないと心が全く落ち着かなかった。

小学4年の夏休み、私は普段よく遊ぶ数人の友達とその友達の家で1泊2日のお泊り会をした事があって、夕方頃に友達の家にみんなでお邪魔して夕飯をご馳走になってから少しの時間部屋でクラスの噂話などをしてお風呂に入った。

そこは然程さほど広くはなかったが、みんなで一緒にギュウギュウになりながら笑い合ってお互い肌と肌を合わせながら入った。

お風呂から上がって身体を拭き自分達が用意したパジャマに着替えて、順番にドライヤーで髪を乾かした。

そしてみんなで部屋に戻ると既に布団が敷かれていて、その上で何か大声ではしゃぎながら喋っている時、私は無意識に自分の脚を撫で回したり太ももに口づけしたりしていたのだが、その時私のおかしな行動を発見した一人が私を指差して「琴音、自分の脚にキスしてる」と言って笑いながらからかった。

みんなも、驚いた顔をして右脚を持ち上げている私を見て笑った。

みんなの笑い声には全く悪意がなかった。

しかし夢中でしていた癖を今はじめて注意されたので私は暫く何も言えずに黙ってしまった。

間もなく友達のお母さんが私達のいる騒がしい部屋に入って来て、私達はもう寝るようにと注意されたので行儀良くそれに従って寝る支度をして電気を消し、寝た。

みんながすやすやと眠る中、私だけぼんやり天井を見つめて物思いにふけっていた。

それが私に自分の特殊な性癖を自覚させた、些細で重大な事件だった。

私が中学生になると、両親は私と兄が一緒にお風呂に入る事を禁止して、それ以来二人は別々に入るようになった。

私は兄の濡れた美しい脚を見られなくなってしまって、両親の言う事に内心は強く反対していたが、それを実際に言う訳にもいかず、その為半年間は我慢していた。

が、兄の脚に対する好意は日に日に募るばかりで私の心にある情欲が激しく地響きを起こすのを只じっと感じているのはあまりにも辛かった。

私は何とかしてこの乾きに悶える官能を潤す為に兄の脚の代わりを探した。

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