マニアック

悪女の血

私は男の、とりわけ肌の白く筋肉質な男の脚が好きだった。

所謂脚フェチであり、私がこのような性癖をはじめて自覚したのは、今からおよそ20年前、小学4年生の時分じぶんだったと記憶している。

それ以前も一つ年上の兄などの幼い丸みの帯びた白い脚にぼんやりとした好意を抱いてはいたが、それが明確に自分だけの特殊な趣味である事を自覚しはじめたのはその頃だった。

私は小学校を卒業するまでずっと兄と一緒にお風呂に入っていたのだが、兄がまだ低学年であった頃は先述の通り丸みを帯びた滑らかな、毛の生えぬ白い綺麗な脚をしていて、私はそれを見る度にその柔らかい脚の肉を何の気兼ね無しに自由に、股の辺りから膝、そしてそこから膝の裏へまわってふくらはぎのふっくらした湾曲に指先を滑らせながらかかとまで流れ、足裏を通って足の指を一本一本輪郭に沿いながら凹凸に移動させてから最後に艶やかな足の甲から固い脛を舌先で舐め回したいと思ったりして、そして毎晩布団の中で兄の何方かの足が自分の物になる想像をするのだった。

当時は当たり前の事ながら男に対して、とりわけ兄に対して性的な好意を抱いた事はなかったけれども、それでも兄や同級生の廊下や教室を縦横無尽に走り回っている腕白な男子の見える限りの脚が、子供の鼻に甘い香りを運び心を甘美な魅惑に誘う彫刻のように巧緻に彫られた板チョコのように、私の心を非常に動揺させた。

因みに私は父親の脚はあまり好きではなかった。

私の父親はサラリーマンだったが、日頃運動をしない為昔はそうでは無かったらしいのだが大変太っており、また毛深かったので触りたいとも舐めたいとも思わなかった。

母親の脚は、毛はそれこそ一本も生えてはいなかったけれども、シワのような線があったり小さなニキビのような赤いものが膝頭ひざがしらの横や、ふくらはぎから脛までの外側の皮膚にいくつかあったりして矢張りそれに対してあまり興味が起こらなかった。

兄が小学4年生になった時、兄はバスケをしているクラスの友達から誘われたらしくみんなで夕飯の乗ったテーブルを囲んでいる時にその友達と同じチームに入ってバスケをしたいと言って、両親に頼み込んでいた。

両親はそれに対して嫌な顔一つせずに直ぐに承諾してしまった。

そして私の方を見て「琴音ことねもバスケットボールしてみるか」と優しげな声をして私に聞いたのだが、私は面倒臭そうであると思ったし、何よりバスケットボールに興味がなかったので断ってしまった。

それから兄は週4~5日バスケの練習に行き、今までの少しふっくらした身体が段々と直線的な輪郭に近付いていった。

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