存外この仕事は自分に向いているかもしれない、遥香がそう思うのに時間はかからなかった。
自分の知らない世界が広がる怪しい雰囲気の店、本格的な皮製の
お客さんは殆どが自分の30代以上、父親か時には祖父程の年の男性も来た。
大学が終わると店へ行き私は女王様になる。
そこへビシッとスーツを着こなして黒いビジネスバッグを片手に
そんな非現実的な時間を楽しんでいたある日、彼女の元へ予想外のお客さんがやってきた。
黒と赤を基調とした怪しいプレイルームに可愛らしい顔をした若い青年が立っていた。
随分緊張しているようで、黒いボンテージにエナメルのロングブーツを身に
「こんにちは」
遥香は普段より格段に濃いメイクを施した顔で怪しげに微笑む。
「こ、こんにちは…あの、今日は、よろしくお願いします」
立ったままの彼を一度ソファに座らせる。
プレイ時間は内容や好みを聞き出す為のトークタイムを含め長めに設定してあることを説明し、アナタはどんな願望を持っているのと優しく尋ねた。
彼、
「女の人にイジメられてみたい、って気持ちは小さい頃からあるんですけど…彼女には言えなくて、それで…」
彼女に言えないまま我慢していたらある時期から普通のセックスに興奮出来なくなった、それが原因で恋人に振られ、ヤケクソ半分でここへ来たのだという。
彼の希望が大体掴めた所で、遥香はスッと立ち上がった。
「今日はよろしくね、変態君」
「…よろしくお願いします、遥香さん」
「女王様、でしょ?」