「はっ……あぁ、んん……っ」
女性の甘い声が千香子の耳に届く。
それはまさに最中の声で、声とともに興奮して荒くなった息づかいも聞こえてきた。
思わずそちらに視線が動いてしまう。
「んふっ、あ、あんっ」
隣のテーブルに座る二人は、いつの間にかソファに二人で隣同士に座り、身体をくねらせていた。
男性の膝に女性の脚がのせられ、その間を手で弄られている。
30代後半ほどのそのカップルだ。
女性の着ている品の良いワンピースは腹までたくし上げられ、白いむっちりとした脚が惜しげもなく晒されていた。
「あ、あ、あっ」
男の手が動く度に、女性が感じ入った声をあげる。
くちゅっくちゅっと水音も小さく響き、部屋の温度が官能に包まれていく。
「あ……」
そうだ、そういう店だった――
料理に夢中になっていた千香子はそこでようやく思い出した。
『カップルだけしか入れない、月に一度の特別な日』
さゆりの言っていたことは本当だったのだ。
「んっああっん……あ、きもち、いいっ……!」
身体を絡め合う二人はどんどん盛り上がる。
さらに女性の脚が広げられ、差し込まれた男の指が激しく動いている。
女性は自らワンピースをさらに胸元までたくし上げ、自分の手で胸を揉み始めた。
ブラジャーに手を入れ、その中心で尖っている乳首を指で摘まむ。
「はうう……っ、イイっ……!」
淫らにくねる女性の様子に、千香子は息をのんだ。
こんなに間近で、他人がセックスをしているところなんて、今まで見たことがない。
心臓がドキドキして、それでも二人から目が離せない。
体温が上がり、呼吸が浅くなってくる。
女性が喘ぐ度に下腹部がきゅん、と疼いて、自身が興奮しているのをいやでも感じてしまった。
ソファの上で悶える女性が、自ら体制を変え四つん這いになり、男に腰を突き出すように動く。
ぐちゅぐちゅっと差し込まれた指が音を立てながら激しく女性のナカをかき回し、その快感に首を反らせる女性が薄く瞳をあけ――千香子と目があった瞬間、唇に弧を描いた。
唇の間からチラリと覗く舌がひどくなまめかしい。
だんだんと女性の声もさらに激しく部屋に響き、男の手の動きによって、女性の身体はビクッビクッと痙攣した。
白い尻がきゅう、と強く形を変え、男の手を強く包み込む。
「あっ!あっああっ!」
甲高い声が部屋に響き、女性の身体が脱力した――瞬間、千香子は手首をつかまれ、身体を引き寄せられた。
「えっ、ヒロ――んっ、ふう、んっ……」
いつの間にか隣に座っていたヒロムに抱き寄せられ、唇を飲み込むように口づけられる。
ぽってりとした厚い唇に激しく自身の唇をはまれ、舌が侵入してすぐに千香子の舌を絡め取る。
息も出来ずされるがままに激しく口内を愛撫され、溢れた唾液が千香子の顎を伝う。
「ふ、ぅうんっ……ん、はんん……」
何度も頭を揺らし角度を変え、執拗なまでに口の中をなめ回される。
上顎をヒロムの舌先がなで、唇を吸われると、あまりの気持ちよさに力が抜けていく。
「ヒロ、むうっ……」
ようやく唇を解放され、喘ぐようにヒロムの名前を呼ぶ――近距離で見えたヒロムは頬を紅潮させ、息を荒げながら千香子に再び口づけた。
「はっ、んんっ――」
身体を強く抱きしめられ、二人の身体がぴたりと密着する。
下腹に感じた硬い熱は、普段のヒロムからは想像できない程で――欲情した男に舌を絡められながら、千香子の身体もどんどんたかまっていく。
キスをしたままゆっくりとヒロムの身体に押し倒され、ソファに千香子の身体が沈みこむ。
薄暗い空間に浮かび上がるヒロムは、千香子の知っている彼とは別人のようだった。
いいバーに行くから、と用意したスーツのスラックスは盛り上がり、性器の昂ぶりが目に見えてわかる。