「フ…フツツカモノですがよろしくお願いします」
彼の腕が彼女の体に回り強く抱きしめてくる。
そっと彼の背中に手を回した。
少しの間ぴたりとくっついたように抱き合って、それから少しだけ、腕を互いの背に回したまま体を離す。
僅かに前かがみになった彼の顔が私の目の前まで降りてきて、吐息さえも感じられるほど近ずいてから小さなささやき声で「いいですか」と訪ねられた。
………
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「…はい」
………
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私に触れる彼の唇が震えているような気がした。
髪を撫でる手も背中に回されたままの手もぎこちない。
重ねられた彼の唇が離れる。
………
………
「美優、寝室に移動しませんか」
「…寝室、って?」
「あぁ、そのですね、一応…夫婦ですから、二人用の寝室は用意していたんです。ただ私達は初対面ですし、いきなり一緒に練るのもどうかと思ってあなたの部屋にもベッドを置きました」
庭に出てきた時と動揺に彼に手を引かれて彼の寝室へと向かう。
奥まった場所にある開けたことのない扉。
その向こうには大きなダブルベッドが我が物顔で鎮座しており脇には控えめな飴色のチェスト、サイドテーブル、ランプ等が配置されている。
経験がなくとも年相応の知識があれば今からここで行われることなんてすぐに予想できる。
「あ、ま、まって…私出かけて、汗かいてて、まだシャワー浴びてなくて…」
「かまいません」
「私がかまうんですけど…」
「気にしないでいいんです、そういう事は」
促されるままベッドに腰掛けた美優に覆いかぶさるようにして二度目のキス。
「美優さん、すみません、我慢できそうにありません」
「そう、ですか…」
普段大人びて
思い切ってベッドの中央まで後ずさってみると彼も私を追うようにベッドにあがってきた。
そしてもつれ合ってなだれ込むように白いシーツの上で三度目のキスをした。
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後編に続く…