こうしてあたしは陸久に後ろめたい気を持ちながらも、イケメン王子の姉様の部屋へ入った。
大きなクローゼットの中にはたくさんの服が詰められていた。
そこを全開にして「好きなのどうぞ」と言ってもらう。
しかし…
ここまでしてもらっても良いのだろうか。
いくらお姉様と話が通じているとしても、これはまずいのではないか…。
「あ、ちょっと春ー?姉ちゃんこれから仕事行くから、鍵預けとくよー?」
え?
「ういー。わかった。今日部活休みだから、姉ちゃんが帰ってくるまでには戻ってくるわ」
「…春、あたしはもーーーしばらく戻ってこないの。仕事だから。そう、仕事。寝室は好きに使いなさい」
「!?姉ちゃんなに言って!!!!!」
「冗談冗談」
そんな会話をしているなどつゆ知らず。
真剣に服を選んでいた。
「阿部さん。ちょっと電話するから部屋で着替えて待ってて?終わったら電話して。
はい、これ俺の携帯番号」
「は、はい」
「じゃぁ覗かないから安心して着替えてね」
「…うん」
………
………
………
着替えが終わるとあたしは紙に書かれている番号に電話した。
するとすぐに鈴木くんが出た。
終わったと話をすると、あと10分後に戻るという話。
なんか…疲れたな。
なんでこうなったんだ…?
陸久と仲直りしたくって夜通し考えていた。
「鈴木くんのお姉さんの部屋…なんだか良い香りするなー…」
…ん?
なんか玄関の鍵が回る音がした。
そっか、鈴木くん戻ってきたんだ。
ってかあたし今…寝てた?