信じてもらえないかもしれないけれど、本当に、軽い気持ちだった――。
「はぁー……
私、真理は、一回りくらい年上の、夫ではない男の人に抱かれている。
彼の名前は
苗字以外のことは知らない。
少し剃り残しのある髭が私の素肌を滑り……うなじの当たりに息がかかる。
ささくれた太い指も、固い爪も、几帳面な夫とは、何もかもが違う……。
「あまり、かがないで……」
恥ずかしくて背を丸めても、城田さんはそれを許さない。
「なんで。風呂あがったばっかりでしょ」
「ん……だって、くすぐったい……」
犬みたいに髪の匂いを嗅がれ、背後から無遠慮に胸を揉まれる。
乱れた服からはすでに意味をなさなくて、裾をまくり上げれば簡単に胸がこぼれた。
「ん……ちゅっ……あー……肌がきれいな女の子っていいな……」
「ひあ……! ちょ、そんなとこ、舐めるの……っ」
城田さんは私の首筋をつぅっと舌でなぞる。
耳たぶを甘噛みし、息を吹きかけられたとき、ぞくぞくとしたものが背筋を走った。
――あぁ……私。
二人で、ラブホテルに入ったときから、無意識に視線を落としていた。
仰け反るような刺激に顔を上げて……安っぽいシャンデリアに似た照明を見上げる。
反射した自分の顔は、正確には写らない。
――この人に、これから抱かれるんだ。
今更過ぎることをぼんやりと思い返し、期待なのか、背徳感なのか、よくわからないものが目まぐるしく心中をかき乱す。
「あ……だめ、耳……なんや、やらし……!」
武骨な見た目とは相反して、柔らかく、優しく、でも大胆に舌で肌をなぞられる。
一番感じてしまう耳をぴちゃぴちゃと音を立てて舐められたとき、ダイレクトな水音に思わず身をくねらす。
「音、恥ずかしい……っ!」
「んー? 恥ずかしいから、いいんでしょ?」
まるで、普段愛撫されていないことを見透かされているようでかぁっと火照る。
もじもじと足をすり合わせたことを、城田さんは見逃してくれなかった。
「真理ちゃん、感じてる? こういうの、好き?」
ちゅう……と、強い力で肌を吸われ……鎖骨に赤い花が咲く。刹那、あぁっと甘く鳴いてしまう。
「す、き……」
痕に残ることはしてはいけない。
そんな当たり前な判断すら、つかなくなる。
「だよね。心臓。すげぇ早い」
城田さんは私をベットに押し倒し、胸を掴む。
柔らかく形を変えた胸は城田さんに懐いているみたいだった。
「ん……」
どきどきと暴れる心臓……。
緊張していることを悟られるのが嫌で、城田さんの肩に腕を回し、自らキスを仕掛ける。
「んん……ふぁ……ちゅ……」
重なった温度が、擦り合わされ、舌を絡めて……互いの口内をまさぐるたびに、緊張が全て期待に塗りつぶされていくみたいで……。
私の中心は、夫の前ではありえない程潤み切っていた。