「鈴原さん?」
「……野暮だと思って聞かなかったんだが、
お前の官能における経験値ってのはその、見学のことを言っているのか」
「そりゃそうでしょ。
さっき言ったじゃないですか。こちとら中高大女子の花園で育ったサラブレットだって。
……まぁ、あのとき実体験を済まさなくてよかったなって、今はめっちゃ思ってます」
「ほお……『当たり前だ』と言ってやりたいところだが、一応理由を聞こう」
「……だって、あそこで見たことより、
私、もっとえっちなこと鈴原さんにされていますもん」
私は鈴原さんの肩に腕を回す。
「もう、こんなの知ったら、戻れないじゃないですか。
責任、とってくれるんですよね?」
「最初からそのつもりだ」
思えば、こんなにいやらしくむつみあっているのに。
一方的に脱いでいるのは私だけで、
ジャケットを脱いだだけで衣服に乱れのない鈴原さんの姿はなんだか不公平に思えた。
私は自らキスを仕掛け、最初に施されたときのように、角度を変えて唇をはむ。
舌を伸ばし、絡め取り、優しく吸いながら口内をまさぐった。
「んむっ……ちゅ……」
もっと、もっと彼を味わいたくて。
少しかさついた、皮の熱い鈴原さんの唇をはむはむと感触を楽しむ。
こすれ合う度に酸欠で息が苦しくなるのに、
鈴原さんが嬉しそうにしている様子が伝わってやめられない。
「ん……はぁ……経験値ゼロのわりには、エロいキスができるんだな」
「それはもう、実戦で教えてくれるいい先生がいますから……
私、もしかしたら天性のテクニシャンかもしれないですよ」
「一言余計だ」
照れたように笑い、鈴原さんは身体を放す。
金属の音がして、そこが寛げられたことを悟った。
スラックスを押し上げていたそれは、
下着から解放されるとお腹につくんじゃないかという勢いで反り勃っていた。
赤黒く、血管の浮き出た独特の形は直視していいものかと惑う。
「ほら。これも経験」
「あ……」
鈴原さんは私の手を取り、男根に触れさせる。
私の掌のなかでびくんと脈打つそれは人の身体の一部であることを疑うくらい硬くて、熱い。
「なんか、ここだけ別の生き物みたい……」
これが自分のナカに今から入るんだと思うと
……生々しいのに、身体がキュンと疼いた。
つるんとした亀頭から、ぼこぼこしているところもあって
……優しく握り手を上下にすると透明な液がとろりと零れる。
「……っ! はぁ……そのままされたい気もするが、
もう限界なんでね……こっちのやり方はまた次回で」
鈴原さんは少し息を詰めて、笑う。