「もう、くすぐったいよ…それじゃ、そろそろベル鳴るから」
そう言って腰を上げると彼は「おう、お疲れ」と手を振って笑う。
「幸輝も、お疲れさま」
部室棟を出ると相変わらず雨は降り続いていた。
気だるげに赤いチェックの傘を開いて校舎へ向かう。
さっきまでの幸せな温もりはすっかり冷めていた。
下を見ればコンクリートの水たまり、上を向けば暗い空。
私は温もりがほしい、彼は快感が欲しい。
お互いの利害が一致した体だけの関係。
わかっていたつもりだったんだけど、体を重ねると情が移るって本当だったんだなぁと半ば他人事の様に目を伏せる彼女のバッグの中で携帯が震えた。
画面にはすぐさっきまで一緒に居た彼の名前。
指先を滑らせ内容に目を通す。
『明日は午後の授業無かったよな?デートでも、どう?』
- FIN -