自宅ではあたしは悩んでいた。
もうすぐ約束した時間になる。
どうしよう………
そう思っていると、お母さんが手紙を持ってきた。
「芽衣。ちょっといい?」
「今考え事してるから」
「……これは大切な手紙よ」
「手紙?」
がちゃりとあたしの部屋のドアは開かれた。
そこには母一人が立っている。
手には何かの封筒を持っていた。
「この手紙は先週届いたの。あなたに渡すか悩んだけど………これはやっぱり必要かなって」
「誰から」
「………うん。龍也くん」
あたしは飛び上がる。
「龍也!?」
「そう。かくしてごめんね。あなたに届けるわ。じゃ、お母さんは仕事で病院行くから。お父さんはずっとそばにいるから、大丈夫よ」
「いってらっしゃい」
部屋を出た母は、
どんな気持ちだったんだろう
思い返せばきっとつらかったよね。
あの事件があったから。
………
………
………
―芽衣へ
一生で最後の手紙だ。
雅樹が来なかった日の話はしっかり話した方が良い、と今の今まで、
何年の月日が経っていようと考えていたんだ。
でもわかった。
これはアイツからは言えなさそうだし。
実はな
アイツの母さんが自殺したんだ。
あたしは手紙を持つ手に震えが走った。
―それはひどかったらしい。
母さんはアイツと親父さんを巻き込んで火災を起こして、親二人は死んだ。
けど親父さんはアイツだけはって守ってくれたみたいで、すぐに病院に運ばれて助かった。
ただ結局はアイツの両親は死んでしまった。
それでも元気で俺んちに住んで、俺ら家族は励ましてきた。
けどな、アイツ泣いたんだ。
寝静まって誰もアイツに気付かないところでこっそりと泣いてた。
その時に呼んでた名前は、誰だかわかるだろ?
逢いたいんだよ。
もしそっちで出逢えたなら、逢ってやってくれ。
俺は今、これしか出来ない。
お前もひどい目に遭ったことは知ってる。
だからお互いにお前らは必要としあっているんだ。
もういい加減、素直になれ。
じゃぁな。