入ってすぐ横にSMチェアが置いてあり、正面には高級そうなベッドがあった。
更にその横の壁には、磔台があり、ベッドの側には腰の高さ程の棚があった。
入口から左手には浴室がある。
「清美さん、どう?」
清美は呆気に取られていた。
まさかこの家に、こんな隠し部屋があるなんて思いもよらなかったし、しかもその部屋は、立派なSMルームだったのだ。
私が高校時代に思い続けていたタケルという男は、一体どんな性癖をしているのだろうか?
そして、なぜこんな部屋を私に見せたのだろうか?
「清美さん、俺はずっと、清美さんの事を想い続けてたんだ」
「え?」
清美は彼の発言に、胸を打ち砕かれる様な衝撃を覚えた。
なぜだか泣きたくなった。
自分の今の感情を表現するには、涙を流す事でしか出来ない様な気がした。
それだけ複雑だった。
「清美さんはSMプレイとかした事ある?」
清美は首を振った。
「どうかな、もし良かったら、俺と、してくれないか。いや、強制じゃないんだ。嫌だったら嫌と言って欲しい。それに、彼氏も居るんだから、こんな事を押し付けようとは思わないから」
清美は再び、この奇怪な部屋を眺め回した。
そして彼が裸で自分、或いは他の美しい女性をここに連れて特殊な情事に励んでいる姿を想像した。
「俺はずっと、悩み続けていたんだよ。これは前にも話したよね。昔から、俺は異性を支配したいという欲求があった。それも特に美しい女性を」
こう言い終わると、彼は清美を見た。
彼の目は、先程よりも鋭い、しかし甘美な色をしていた。
そんな美しい目に、清美は思わず恍惚な気分になって、全身に震え伝わる感動に、その場に立ちすくんだ。
彼の目は、もう既に清美を完全に支配してしまった。
彼の美しい目に、彼女は抗う事なく、服従してしまったのだ。
彼女の情欲はいとも簡単に彼の手中に収められてしまった。
「私で…良いの?」
タケルは優しく微笑み頷いた。
そして彼は清美に近寄り、彼女の目の前まで来ると、そっと両手を後に回し、自分に抱き寄せた。
彼女から理性や倫理は、彼の綺麗な手で脱がされる彼女の服と一緒に床に捨てられた。
清美は下着姿になっても、恥ずかしいという感情は全く沸かなかった。
「美しい…清美さんの体は、ほんとに美しいよ」
タケルはそう言って、清美の華奢な肩に手を置くと、優しく彼女の口にキスをした。
しかしそれは軽いキスであった。
彼の温かい唇が直ぐに離れてしまうと、清美は僅かに踵を上げて、唇を彼の前に差し出した。
しかし彼はそれを受け取らず、彼女の手を引いてベッドに腰をかけた。
そして、
「まず確認しなきゃいけない事があるんだけど…」
清美は、目隠し、手錠、玩具の使用、オナニーの見せ合いをOKして、アナルや、あまりにも痛い行為はNGにした。
コンドームの着用は、お互い必須の条件であった。
「まずはシャワーで体を洗おう」
「二人で洗いっこするの?」
「いいや、一人ずつだよ」
清美が先に浴室に入った。
そしてさっさと体と頭を洗ってしまうと、はじめに手渡されたバスタオルを巻いて浴室を出た。
タケルは清美が出てくると、ドライヤーのある場所を教えてから、浴室に行った。
暫くして彼もバスタオルを巻いて出てきた。
バスタオルより上の、露わになった上半身は、ギリシャの彫刻の様に美しかった。