マニアック

逃がさない、逃げられない、捕まえた

「ところで」

「本題に入ろうか」

「……っ!」

 私の肩を抱く一宮君と腰を抱く拝島君。
………

………
「僕ら、三人で結婚しようって約束したよね?」

「俺達からどうして逃げた?」

「そ、んなの! 無理に決まってるって最初からわかっていたじゃん! 私達大人になったんだよ? あんなことずっと……」

 続けていられるわけがないよ、と。

 そう、口にするつもりだったのに。

「黙って」

 拝島君が唇を重ねて塞ぎ、一宮君が耳元で低い声を放つ。

 私達が出会ったのは中学生の頃。

全員学校はバラバラで、家庭環境も大きく違う。

同じだったのは、生活区域が重なる場所があったことと……全員、毒親育ちだったこと。

 

 拝島君の家はいわゆる医者の家系で、エリート意識が高い。

幼少期から勉強漬けだったという彼はろくに息抜きの仕方も覚えられないまま少しでも成績が落ちれば露骨に暴力を振られていた。

 相対して一宮君の家はお母さんもお父さんもそれぞれ不倫相手に夢中。

夫婦のすれ違いは強固なもので、ついにどちらも帰ってこない家に一人で住んでいた。

 かく言う私はお父さんが借金の末に自殺。

お母さんは職を転々としながら、同時に男の人も取っ替え引っ替えして、私のことなど見えないものとして扱っていた。

 そんな私達が出会ったのは、一宮君の住むマンションの駐車場だった。

 拝島君の通う学習塾と私がゴミを漁るコンビニと一宮君が使うコインランドリーが同じ敷地内にあって、私達はなんとなくお互いを知っていた。

 

 そして、なんとなく、互いに、どうしようもない渇きに喘いでいたことを察してしまった。

 最初のうちは寄り添うだけだったように思える。

でも、終わらない暴力と理不尽は確実に私達をむしばんだ。

 やがて高校生になった私達は、芽生えた性欲のタガが一気に外れた。

本能に従い三人でまぐわうことを覚えてしまった。

 孤独を打ち消すように、持ち寄った寂しさをすりつぶし、間違った距離感が強烈な快楽とどうしようもない幸福感に変わった。

 けれどもそれは一時的な夢に過ぎないもので、普通の生活を渇望していた私達がこんな異常を続けていたら幸せになんてなれるわけがない。

二人もそれをわかっていると思っていたのに。

「ん、ふ……んん……っ!」

 拝島君は拒否の言葉を許さないとばかりにキスを深くして、舌で口内を弄る。

ちろちろと上顎を撫でられると、ぞわりとした感覚に思わず身を引いてしまうが、背後から私を抱きしめる一宮君が許さない。

 ――ぢゅぼっ! ぢゅっぢゅう……ちゅむっくちゅちゅっちゅ……

 唾液に塗れた肉厚の舌がなんどもトロトロと混ざり合う。

歯列をなぞるもどかしさや、唇をまれる気持ちよさに目が潤み、息が上がる。

「気持ちよさそうだな。後で俺ともたっぷりしてくれよ」

 一宮君は耳元でクスッと笑う。

ゆっくりとブラウスに手をかけられて、服の上から胸を揉まれる。

キスを至近距離で見られているだけでも恥ずかしいのに、尚のこと羞恥心があぶられた。

 一宮君の節くれた指で大胆に揉まれれば、柔らかく輪郭を変える胸はあっという間ブラがズレる。

 切なく尖り始めた乳頭をナイロン生地のブラウス越しにすり……とくすぐられたら堪らず嬌声きょうせいこぼれた。

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