あたしは把握しきれていないが、桃たちはわかった様子。
それで楠木さんを呼んで振り返るとそこにはいなかった。
「やばい。あの人カンカンだわ」
「楠木さんが?」
「亮太んち行くよ!」
「え?え?」
「話はタクシーの中でするからとりあえず走って!!」
言われるがままにしたあたしだった。
事情は聞いた。
まずあの日のあとから。
実はあのラブホテル事件の翌日、楠木さんは亮太と会った。
あたしと別れるか、本気で付き合うか選べと言ったらしい。
すると亮太は、浮気はあたしがしていて、怖いから他の女の子に相談ということで会うことが多いと言っていた。
それでも楠木さんはあたしを信じて、あたしが本気で亮太を好きならもっと愛情をお互いに出したほうが良いと提案したりしていた。
桃曰く、浮気なんてしたことないあたしだったから、だから他の男性とホテルだなんて信じられなかったらしい。
あたしとは別れないつもりだからかだから必死に言い訳をしていた。
離れていくことが怖く感じた亮太は、嘘ついて間接的に桃と楠木さんの番号を一つ違う番号にして、なおかつ着拒。
会わないようにと毎日の見張り。
見張りの解けた今日、ようやく会えたと言っていた。
「楠木さん…」
あたしは泣きそうになる。
こうしてあたしたちは亮太のマンションに到着した。
すでに二人はオートロックにて対面していた。
「楠木さん!」
あたしは楠木さんを呼んだ。
「佐倉ちゃん!」
「あたしなんかのために…ありがとうございます。でもハッキリわかりました。あたしが好きなのは、楠木さんです。あたしには楠木さんが必要なんです」
「え?待てよ依子…俺…」
「いままでありがとう亮太。これからはあたし、好きなように過ごしたいの。別れよう」
「…分かったよ。じゃぁな」
「亮太。今までありがとう」
亮太、あたしは本当に好きだったよ。
けどこれは桃の言う通り、依存だったかもしれない。
このせいで迷惑かけたかもしれない。
ごめんなさい。
これからはあたし、自分に素直に生きていく。
だから、今までのあたしを造ってくれた亮太にはお礼を言いたかった。
ありがとう。