あたしはどんな顔してる?
しっかり笑えてるかな。
しっかり悪役になれたかな。
こうでもしないと翔太郎も彼女も動けないだろうし。
本当はね、わかってた。
翔太郎のお義母さんから何度も言われていたから。
翔太郎には弓がいて、弓には翔太郎がいる。
そうやって生きて行かなきゃならないのに。って。
いずれわかる日が来る。その時は別れてくれるよね?って。
その日からあたしはお義母さんからの圧力を受けることになった。
とんだご家庭だこと。
って思っちゃってたことは告白します。
あたしは部屋で荷物をまとめていると、玄関先から泣き声が聞こえた。
どうやら弓さんだろう。
きっと‥‥‥翔太郎があたしのところに来ようとしたけど止められたのがオチかな?
荷物をまとめ終わって、あたしはキャリーを持って部屋を出た。
「待てよめい。まだ話は終わっていない」
「あらなにか?あ、離婚届?明日お義母さん伝手で送るから待ってて」
「違う!俺らは夫婦だろ!?なんでそんなに一方的なんだよ!」
「‥‥‥こんな子どもを優先して考えるとか最悪」
………
………
ごめんなさい‥‥‥翔太郎。
「目の前で死なれたらいやだし、一緒に重荷を背負うことはしたくないしね」
本当にごめんなさい。
「わかったよ。そんなに離婚したかったんだな。プロポーズして悪かった。じゃ、元気で」
………
………
泣きそう。うわぁ、泣きそうだよ。でもだめなんだ。笑え‥笑うんだ!!
「はい、ありがとうございました!」
翔太郎を背中にしてあたしは涙をこぼした。
後ろからは弓さんの泣き声がしてたけど、泣き声の音量がアップしたために、自宅に入らせたみたい。
「‥‥‥はは。これじゃ、お義母さんの思うつぼだわ」
お義母さんと言う通りになって悲しかったし、切なかった。
心の中がぐちゃぐちゃで張り裂けそう。
「‥‥‥っ、」
思わずあたしはその場にしゃがみこんだ。
ズキンズキンと鳴りやまないあたしの胸の中。
しかも最悪なことに雨まで降りだす。
まるであたしを徹底的に痛めつけてるのかよってくらいザーザー降りだわ。