あたしは大学に通っている
両親がいなくて独り身のあたしは、施設で育ちました。
勉強が趣味だったのでひたすら勉強をして、今ではトップレベルで卒業し、奨学金で大学に通っているのです。
ただやはりいつまでも施設にはいられません。
だから同じ施設のみんなの手本になれるように自立しようと決めました。
学長の知り合いに裕福な知り合いがいるそうです。
あたしは学長の伝手を使って、その裕福な知り合いの経営するマンションに住めることになりました!
まぁただ…気になるのは施設とはかなり離れていること。
なんだかんだであたしはまだ施設から離れることを恐れているんだな…。
けど今はそれを考えてはいられない!!
少しでも家計の足しにとバイトを探している最中なのです!!
「え?」
ある日大学で友達に誘われたのは、家庭教師。
しかし相手は高校一年生の男子。
その上イケメンらしい。
「今はコロナ流行ってるからなかなか勉強に身が入らないらしいんだよね。だから最初はリモートでその子の状況を把握して欲しいんだよねー」
「…むず。別にあたしじゃなくても良くない?」
「卒業アルバム見せたらアンタを気に入ったのよ」
「まるで気まぐれ青年だね…お給料は?」
「裕福家庭だから安心しなさいな」
「よし、乗った!!」
こうしてあたしは、まだ見ぬ高校一年生の男子の家庭教師をすることになったのでした。
翌日、言われたとおりに裕福家庭の小早川家に向かった。
玄関からしてすでに高級感があふれています!!
これでお金を稼いで…あー幸せ!
あたしは心ウキウキでインターフォンを鳴らした。
『はい』
「あ、こんにちは!私は知り合いの中島小春さんから紹介を受けた、大川莉音と申します。こちらの小早川旬哉くんの家庭教師をする予定で伺いました」
『けっこうです』
「へ?」
『だから家庭教師はいりません』
なにーーーっ!!!!!
あたしのバイト代が!
あたしのお金が逃げていく!!
そんなことは許さない。
「ですが私も高校の頃はよく個別で見てもらって助かること多かったですよ?」
そう誰だかわからない小早川家の人間との会話は非常に難しい。
バトルをしていると後ろから声がした。
きれいな女性の声だ。
振り返るとそこには物腰柔らかいような天使のような女性が車から降りてきた。
「あらあら。もしかしてあなたが大川莉音ちゃん?」
「へ、あ、はい!大川です!」
「ふふっ。あの子いつもああなの。理由づけて追い返すのよ」
「……今会話していたのって小早川旬哉くんなのでしょうか…」
「そうよ」
ちょっと待てぇ!!あのガキ、わかってて追い出そうとしてたな!?
「でもあなたみたいに反論するのは初めてかしら。いつも旬は無言で切っていたから」
笑って話していると、天使の携帯に着信が来た。
少しだけ話しているとあたしを見て微笑む天使がいた。
そして数分後、電話は終わる。
あたしは帰ることに決めて一礼をすると天使から制止の声をかけられた。