「今日はありがとうございました」
ホテルを出るころには、彼はまた敬語に戻っていた。
二回目の射精の後、私たちはまたシャワーを浴びて、汚れを落とした。
彼は髪にも潮がかかっていたから頭も洗っていた。私も、自分の唾液でぐちゃぐちゃになっているところだけ髪も洗った。
そして、膣の中に残っている精液をかきだしてからよく洗った。
安全日とはいえ、さすがに精液が残ったそのままにしておく勇気はなかった。
「こちらこそ、ありがとうございました」
私も彼に合わせて、入ったときと同じように敬語でお礼を言った。
「今日子さん」
「はい」
「今日はどうでしたか?」
「とても、よかったです」
「刺激的、でしたか?」
「はい、とても」
今日のセックスは、とても刺激的だった。
初めてあった人とのセックスも、お風呂でのセックスも、潮吹きも、そのどれもが全部初めてだった。
そして、あんな快感の渦に飲まれたのも。
彼は駅に向かって歩きはじめた。
「瞬さん」
そんな彼を、私は呼び止めた。
「もしよければ、なんですけど」
そして私は、おそるおそる言った。
「はい」
「また、会ってくれますか?」
私が聞くと、彼は口の端を少しだけ持ち上げて、
「今日子さんさえよければ」
と、そう言ってくれた。
「今度はもっと、刺激的なことをしたいですね」
「もっと?」
「考えておきますよ」
彼はもう片方の端も釣り上げて、微笑んだ。
その笑顔はとても意味深げで、私は知らない間に惹きつけられてしまっていることに気付いてしまった。
この関係は、とても刺激的な関係の始まりだったのかもしれない。
駅で別れるころには、その感覚は確かなものになっていた。
家に戻った私は、その確信を抱えたまま、家事を始めた。
- 了 -