一人暮らしの大学生なんて暇さえあれば友達を呼んでお酒を飲んだりゲームをしたりしている、というのは世間一般で持たれてる印象だと思う。
かく言う私もその1人で何かあれば彼氏と友人カップルを呼んではお酒を飲んだりお酒に飲まれたりしている。
乾杯の理由なんて何でもよくて、試験が終わった事に、バイトの時給が上がった事に、給料日に、とにかく何にでも乾杯していた。
それこそ「新しい靴を買ったから乾杯」と言った具合に。
乾杯の理由は気持ちよくお酒を飲むために必要な心の言い訳でしか無いのだ。
そんな今日の乾杯は友達カップル
一周年目は二人きりで祝うだろうけど中途半端な記念日なら四人で祝ってもおかしくはない。
「紗耶香、今日はペース早くない?」
「んー…そうかも…なんかめっちゃ楽しくて、つい」
顔を赤らめて五本目の缶チューハイを空けた友人に自分の家のトイレを
「大丈夫だって。紗耶香が吐いたら雅之が掃除すっから」
「なんで俺やねん」
「可愛い彼女のゲロくらい喜んで掃除しろよ、彼氏だろ」
「じゃ、
決まったなー決まっちゃったわコレ」
ゲラゲラ笑いながらくだらないことこの上ないお喋りで盛り上がる男二人も相当飲んでいるようで、顔は赤く目は焦点が定まっていない。いつもいつも皆が先に酔っ払ってしまい半端に酒に強い私は置いてけぼりをくらう。
「はいはい、もう夜中だから騒がないよー布団敷くからそろそろ寝ようか」
「えーうちまだ飲めるで」
「だーめ」
まだ寝ない、とごねながらも
「彩奈、お前もベッドで寝ろよ。俺ら床で寝るから」
「えっマジで?俺、紗耶香と一緒に寝るつもりやったんに」
「ほら、もう寝るよー」
紗耶香と私、彩奈がベッド、信二と雅之が床の布団に入り電気を消す。
壁際に横たわった私の隣で普段より幾分か酒臭い紗耶香が変な寝相で既に寝入り始めていた。
彼女は何故かうつ伏せで寝る。
皆の寝息が聞こえ出し私もうとうとと眠りかけた頃、最悪なことに尿意で目が覚めてしまいゴソゴソとベッドを抜けだした。
飲んで寝るのは好きだけどビールを飲むとトイレが近くなるのは好きじゃない。
真っ暗だけどどこに何があるかは良く知っている自分の部屋。
足の小指を家具の角にぶつけることもなく廊下に出た。
トイレを出た丁度その時、扉の前に誰かがいた。