ひとりで生きていく…そう決めてたのに…

「いいじゃない別に。収入のあるうちに家を買いたいとは前々から思ってたんだから」

「そんな事言って智子…あんたねぇ、結婚したらどうするの?」

「出来るものなら既にしてるわよ」

大学時代からの友人が、目の前でわざとらしく“信じられない”と言った顔をしてコーヒーを飲む。

結婚して子供もいるアナタには信じられない事かもね、と心の中で皮肉を呟きながら智子は肩肘付いてカップに手をかけた。

「…私今31よ?結婚どころかもう何年も彼氏いないし…家はケジメよ。1人で生きていく覚悟ってやつ」

そんな話をしたのはまだ半年前だと言うのに、今私は目の前で脚立に足をかける男性の背中を見つめている。

「ごめんなさいね、毎週毎週来てもらっちゃって…」

「むしろこっちがお礼を言いたいくらいですよ」

薄いシャツからたくましい背中の筋肉が浮いて見える。

彼とはホームセンターで知り合った。

安い中古物件だったから何かと手直しが必要な我が家の為にDIYコーナーを覗いている際に店のスタッフだと思って話しかけた相手が彼だった。

懇切丁寧に道具の使い方や種類を教えてくれた。

暫く話している内に店員では無いとわかり何度も頭を下げたが彼自身もDIYやセルフリフォームが好きだと楽しそうに話し週末になると家に来て壁紙を張り替えたり床材を敷いたりと大掛かりな作業を手伝ってくれるようになった。

「今のアパート、賃貸なので大したことが出来なくて。一度思い切ったリフォームをしたいと常々思ってたんですよ」

普段はサラリーマンとして会社勤めをしているけれど時間さえ有れば何かと物を作ったりしているらしく手慣れており知識も豊富。

最初は単なる頼もしい友人くらいにしか思っていなかったが次第に異性として魅力的だと思うようになっていた

「…夕食、良かったら食べていかれませんか?」

私は釘打ち用の小型タッカーを片付けながら彼の背中に問いかける。

「え、智子さんが作ってくれるんですか?」

「ええ、もしよければ」

「ではお言葉に甘えて、いただきます」

彼の高い彼が脚立の上から私を振り返りながらはにかむ。

その笑顔にときめいた事に動揺してしまい、食事中も彼を直視できないままで平然と振る舞おうとすればするほど不自然になってしまった。

会えるのは週に一度だけなのに私のせいで変な空気にしちゃったかな、そう思いながら食後の片付けも終えてそろそろ帰り際かという時、玄関まで孝明さんを見送ろうとした私に彼の顔が突然近づいてきた。

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