「お客さん、起きて」
あたしは今最高に幸せだ。
偶然にもあの憧れの石山万里(いしやまばんり)さんに声をかけられてる。
「お客さん!」
お客さん?
やだぁ照れてるの?
いつもみたいに呼んでよ!
…………ってなんて??
ん??
………
………
「お客さん!!」
「ぅわはいいいぃ!!!」
慌てて身体に力をこめた。
するとどうやら地下鉄の中にいるのではないか。
あたしさっきまで石山さんとデートしてたんだよ!!??
………
………
「石山さん!?」
「はい石山ですが」
「へ?」
「なんで私の名前を知ってるのですか?」
「あ、じょ、せいの…………」
「はい女性です」
「すみません、ここって…………」
「南北線の麻生ですよ?眠って下りないのはお客様だけですよ」
思い出した。
あたし同窓会で昔の友達に、好きなアイドルの話をしてて、
かんなり酔っぱらって地下鉄に来て、
平岸行こうとしたけど反対だ!と気づいたけど眠気に耐え切れず、現在があるのだった。
「すみません…………」
「!いいえ!お仕事お疲れ様です!」
「いや飲んだくれにそんな気を遣わないでください。起こしていただきありがとうでした」
「…………ふふっ」
「え?」
「いや、兄と同じ言葉いうんですね。って笑って失礼しました!!」
「お兄さんいいな………」
「うちの兄は一応アイドルなんですよ?なんて」
「!!!!」
「それではお帰りはお気をつけて」
「待って!!」
言ってる。
あたしの脳みそが言ってる。
ここでこの子と離れてはいけない!!と。
「あの!!石山万里さん、をご存じで?」