マニアック

おじさん、抱いて

あたしは汚れてしまった、あいつらのただの人形だ。

その汚れはひどい。まるで牛乳を拭いたあとの布巾状態。

汚れは手のみならず、身体中で汚れてしまった。

 

いつから‥‥‥あたしの人生は人間の生きる世界と変わってしまったんだろう。

「あなただけは生きて」

そういう両親は、あたしが眠っている横で首をつって自殺した。

こんな‥‥勝手に生んでおいて、勝手に増やした借金を苦に、なんて。

考えられない。あんまりだよ、そんなの。

 

幼すぎたあたしはまだわからないまま、たった一人になった。

たった一人になった挙句、借金取りから追われる毎日が続き、

やがておにぎりをくれる借金取りの人と話をするようになった。

追われる、と言えば多少違いはあるが、この人は違った。

頭ごなしに暴力とか振るうのではなくて、あたしの腹ごしらえに食べ物を買ってきてくれる。

あたしの言い分も聞いてくれて、そこからお金の話になるのが毎回だ。

今日もその人はパンを持って来てくれた。

 

「‥‥大人は嫌い」

「あぁ、それでいい」

「だからあなたも‥‥‥」

「俺を恨め」

「‥‥‥」

嫌な人だ。あたしが恨めないコトをわかっててそう言うんだ。

だけどね。あたしに優しくしていれば、おじさんもいつかは‥‥‥。

なんて想像していた矢先に、そのおじさんはそれから来る日が来なかった。
………

………

………

今日もまた、追いかけっこだ。

おじさんが来ないからお腹は減るし、癒される時間もなくなった。

なんで‥‥‥あれ?

なんであたし、泣いてるの?

 

「捕まえたぞ?」

!!!

油断していた。

あたしは背中をつかまれて、ついに捕まった。

この逃げまわっていた時間はなんだったんだ。

そのままあたしは、黒スーツの違うおじさんたちとアジトに行くことになる。

「やーっと捕まってくれたか。娘」

「‥‥‥あたしはあなたの子どもではない」

「てめぇ誰に向かってそんな口を‥‥‥」

「いいんだ。」

「おじさんは?悪い人なの?なんでお父さんもお母さんも首を吊るの?」

「お前はな、やくざの俺に差し出されたんだよ」

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