「おなじ」
「えっ…」
温もりが私の手に絡みついた。
男らしい骨ばった指。
彼は何も答えなかったけれど、きっとそういうこと。
触れ合っている指同士は決して離れようとしなかった。
そしてそれ以上は何も話さなかった。
少し歩いたら自宅マンションに到着した。
オートロックを解除する時もエレベーターに乗る時も私たちは離れなかった。
1人暮らしのこの部屋に異性を入れるのは初めて。
元彼さえ入れたことがなくて、例外は父親と弟のみ。
「散らかってますけど気にしないでくださいね」
ドアを開けて、照明をつけようとスイッチに手を伸ばした。
「んっ…」
彼の柔らかな唇を感じた。
頬に手が添えられ、私は目を瞑る。
軽いキスはほどほどに彼の濡れた舌が私の唇をなぞりながら口の中へと進入する。
音を立てながら舌を重ねたり絡めたりして、互いの隙間をなくそうと身を寄せ合う。
あまりの気持ち良さと喜びに呼吸のタイミングさえ忘れてしまって、彼が吐いた息を飲み込んだ。
早く彼の体が欲しい、肌に触れたい。
腰に置かれた彼の手が私の理性を滅ぼそうする。
「シャワー浴びませんか」
理性をなんとか呼び起こして、強引に彼の唇から離れる。
彼の潤った唇からは色気が溢れ出ていた。
「うん」
「お先にどうぞ」
「ありがとう」
なんだか恥ずかしくて、彼の目を見続けることができなくなっていた。
それでも彼を欲しい気持ちは変わらなかった。
彼は浴室へ直行した。
それから私は、弟が置いていった部屋着を浴室の前に用意した。
10分後、シャワーを浴び終えた短パン姿の彼が部屋に入ってきた。
いくつかの水滴が滑らかな肌を伝っていた。
濡れた前髪は下ろされ、髪の隙間から見える瞳がいつにも増して艶っぽく若々しかった。
「服、ありがとう」
固く締まった筋肉がついた胴体に私はこの後抱かれるのだろうか。
眺めているだけでアソコが疼いた。
「それじゃあ私も」
「うん」
「冷蔵庫の飲み物、なんでも適当に飲んでいてくださいね」
「ありがとう」
浴室前には彼の着ていた服が乱暴に脱ぎ捨ててあり、いかにも男っぽい彼にキュンとした。
彼の元へ戻りたくて身体を洗うのが雑になりそうだった。
メイクをしたままのできるだけ可愛い顔で彼に抱いてほしかったけれど、汗ばんだ顔やべたついた髪に耐えられず全部洗い流した。
身体を拭き終え、ショーツの上に薄い生地のワンピースを着けた。
部屋に戻ると彼はベッドにもたれながらコーラを飲んでいた。
何度読んでもエッチな気分になれるお気に入りストーリーです。笹尾さんファン。今度ちゃんと言ってほしい!続きがあると嬉しいです。