「玲衣(れい)ちゃんからあんたの様子を確認するように頼まれてさ。お邪魔したってわけ」
言いながらナオちゃんはリビングのソファに腰かけた。
「玲衣ちゃんが?何で?」
私はお茶の準備をしながら尋ねた。
「恵美ちゃん、あんた、瑞樹にひどいことしたって?」
「何のことよ?何で私があいつにひどいことするのよ。むしろ私がされた方だっての」
「恵美ちゃんのスマホは、今電源切ってる?」
「ああ、うん。何か着信がうるさかったから」
「なら、電源入れてみたら?」
私はスマホの電源を入れてみた。
「うわっ!何これ?キモっ」
思わずそう呟く私のスマホには大量の着信、メール、LINEが入っていた。
元カレの幸人と元友達の瑞樹から大量に。
そいつらだけでなく、何人かの友人からも来ていた。
その中にナオちゃんと玲衣ちゃんの着信とLINEもあった。
ナオちゃんと玲衣ちゃんからのLINEは、
「今どうしてるの?」「電話出られない?」
といった内容だったけど、他の奴らはなぜか罵倒、説得、説教だった。
「あんた、いくら何でも瑞樹にあんなこと言うことないでしょ?最低過ぎ!」
「瑞樹と幸人君が悪いけどさあ。仕事を口実に、彼氏ほったらかしてるあんたも悪いでしょ?」
上2つみたいな内容がずらずらと並んでる。
「何なの?これ?」
私はナオちゃんにスマホを見せながら尋ねた。
「ははっ。こりゃ、すごいわ。
幸人君と瑞樹、浮気してあんたに謝罪してきたんでしょ?で、別れ話したんだって?
私が知ってるのはここまでだけど、何か幸人君と瑞樹はあんたに謝ったけどひどいこと言われたと触れ回ってるらしいよ」
「何よ、それ?」
「玲衣ちゃんはグループLINEで知ったらしくて、それは幸人君と瑞樹が悪いじゃないと言ったら、総スカン喰らったらしいよ。
それであんたに何か害が及んでないか心配で連絡とろうとしたけど、連絡がつかないから近くに住む私に確認を依頼してきたってわけ。
玲衣ちゃん、今日は仕事だしね」
「めんどくさ。何なの、一体」
「まあ、瑞樹は昔から人の同情をひくのが病的にうまかったからね」
ナオちゃんは皮肉っぽく笑う。
私と玲衣ちゃん、ナオちゃん、瑞樹は小学校からの馴染みだ。
あの頃はまだナオちゃんはナオハル君と名乗っていた。
「一応、きちんと経緯を説明した方がいいかな?」
そう尋ねる私に、ナオちゃんは手を振る。
「やめときなよ。あんたを罵倒してきてるのは、無駄な方向に正義感が強いのと瑞樹にうまく取り込まれた信者だから。何を言っても無駄だと思うよ?」
私達がそう話している間もLINEに既読がついたからか、またもや電話やLINEが入ってくるようになった。
「何無視してるの?」「ちゃんと話し合いなよ」「無責任」
LINE通知でちらっと見えるメッセージでは、こんな内容が送られてくる。