私は小さい頃から絵を描くことが大好きだった。
自分だけの誰にも邪魔されない自由がキャンパスの中にはある。
高校に入り、迷いもなく美術部に入部した。
そこに春馬はいた。
ちょうど、入部して2年がとうとしている頃
急に彼はは屈託ない瞳でまっすぐこちらを見つめ、
美術室の隅ので小さくなって絵を書いていた私を影から引っ張りだした。
最初は何が何だか分からい状態で、ただただ彼の絵に対する感情を聞くだけだった。
震えるほど緊張していた会話もいつしか毎日の楽しみになった。
卒業する直前に、いつもの部室で初めてを捧げた日は
今でも昨夜の事のように鮮明に思い出せる。
心臓が破れそうなドキドキは勿論、好奇心からくる期待も、初めて見た驚きも、痛みも。
こうして時間が経ったにも関わらず、だ。
誰も居ない空間で一言、二言、絵の話をした後、
春馬は私の絵を真後ろから覗きこんできた。
落ち着くような波動の声と吐息が耳に、そして首筋にあたる。
少し気恥ずかしくなってモゾ…と身じろぐと、あぁ、春馬の悪戯な瞳がこちらを見ていた。
それからなだれ込むようにアトリエのコンクリートの上に二人、座り込んだ。